甲子園の風BACK NUMBER
都内有数の進学校・平日練習は最大3時間もセンバツ4強… イチローも称えた國學院久我山の「考える野球」、「うるさいくらい」の対話力
posted2022/04/06 17:00
text by
間淳Jun Aida
photograph by
Hideki Sugiyama
一歩、また一歩。確かな歩みを進めていく。気付けば、國學院久我山はスタート前に定めたゴールの先へ辿り着いていた。
1回戦で有田工を下し、センバツ4回目の出場で初勝利。2回戦は高知を破り、目標に掲げていたベスト8入りを果たした。まだ、止まらない。準々決勝で星稜に勝利。準決勝こそ大阪桐蔭の高い壁に跳ね返されたが、歴史を塗り替えた。
「全てにおいて状況を多角的に見る」象徴は守備位置
國學院久我山には、球速が140キロを超える投手もプロ注目の強打者もいない。ナインが繰り返すのは「全員野球」と「考える野球」。尾崎直輝監督はチームのスタイルを、こう表現する。
「全てにおいて状況を多角的に見て、相手と駆け引きするのがうちの野球です」
最大の特徴は守備だった。
相手打者によって大胆に守備位置を変える。そのスタイルは大会を通じて不変で、4-13で大敗した大阪桐蔭戦でも貫いた。初回、先頭の伊藤櫂人が打席に入ると、國學院久我山の外野手3人がライト方向へ動く。レフトの大野良太は左中間にポジションを取った。右打者の伊藤に対し、レフト線を大きく開けるシフトを敷いたのだ。
7球目、伊藤の鋭い打球が左中間を襲う。左中間を割ったかに思われた打球は、レフト大野のグラブに収まった。定位置であれば確実に長打となる当たりだった。
セオリーでは外野手が前進守備を敷く場面でも、定位置より深く守るケースもあった。内野手も時に、不規則な動きを見せるのだ。投球と同時にファーストとセカンドが極端に一、二塁間を狭くするポジションを取ったり、二遊間や三遊間の広さを頻繁に変えたりしていた。
狙い通りに行かなくても、攻撃でも考える野球を
もちろん、全てが狙い通りにいくわけではない。だが、國學院久我山はアウトにできる確率が高い方法を常に追求していた。有田工戦の3回。ノーアウト一塁でライナーを捕球し、飛び出していた一塁走者を刺したセンターの斎藤誠賢は明かす。
「3月初めに対戦相手が有田工業さんと決まってから、1人1人の打者がどういう打ち方なのか勉強しました。(國學院久我山の投手)成田(陸)が直球や変化球を投げるコースで、どこに打球がくるかを予測して守備位置を変えました」
攻撃でも考える野球や相手との駆け引きを表現した。