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《王者に黄信号!?》マルケスが大転倒で脳神経麻痺…インドネシアGPで、KTMとオリベイラが悪天候でも速かったわけ
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/03/25 17:02
悪コンディションのレースを制し、MotoGPクラス通算4勝目を挙げたオリベイラ。最高峰クラス昇格後3年目、ポルトガル出身の27歳
開幕戦カタールGPではフロントのフィーリングが完全ではなく、行きたくても行けなかったのだろう。我慢のレースで5位でフィニッシュした。どんな状況でも表彰台が見えていれば常にチャレンジしていくマルケスだが、開幕戦カタールGPはこれまでとは明らかに違う戦い方だった。そのせいなのか、あんなマルケスは見たくなかった、もう終わったのか、という声も聞こえた。
そんな声を聞きながら僕は、マルケスに「行けるときは行く」というスタイルに変わって欲しいと願っていた。マルケス自身が言う「マルク・マルケス流(チャンスがあればいつでもどこでも全力)」の走りはいつまでも続けられない。なにより、そんな走りを続けていては身体がもたないからだ。しかし、インドネシアGPの4回の転倒には、簡単にはスタイルを変えられないのだと痛感させられた。
攻め続けた王者が支払った代償
確かに今大会、ホンダ勢は苦戦した。暑さを考慮したミシュランが、ホンダが好調だった2月のテストのときと違うタイヤを持ち込んだことが原因だった。もし、マルケスが欠場していなかったら、ウエットで神業的な走りを見せる彼が、あの悪コンディションの中で、果たしてどんな走りを見せてくれたのだろう。
熱帯の国インドネシア・マンダリカの3月は雨季である。今大会の金曜日と土曜日は、午前中がウエット、午後がドライ。決勝日の午前中は青空が広がったが、午後は激しい雨となった。こういうレースウイークは、マシンやライダーの力だけではどうにもならない、運や不運もある。マルケスは欠場に「本当に言葉もない」とコメントしたが、もがき苦しみながらも猛列にアタックしていく姿は、実にマルク・マルケスらしいものだった。しかし、その代償はマルケスにとって、あまりにも大きかったのではないだろうか。
次戦アルゼンチンGP、連戦となるアメリカズGPに出場できるのだろうか。マルケスが得意とするサーキットだけに、世界中のファンが回復に注目している。
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