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《王者に黄信号!?》マルケスが大転倒で脳神経麻痺…インドネシアGPで、KTMとオリベイラが悪天候でも速かったわけ 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2022/03/25 17:02

《王者に黄信号!?》マルケスが大転倒で脳神経麻痺…インドネシアGPで、KTMとオリベイラが悪天候でも速かったわけ<Number Web> photograph by Satoshi Endo

悪コンディションのレースを制し、MotoGPクラス通算4勝目を挙げたオリベイラ。最高峰クラス昇格後3年目、ポルトガル出身の27歳

 混戦の中にいるときは水しぶきで何も見えず、前に出たら、ヘルメットのバイザーの視界不良でやっぱり視界が悪く、レースを通じて苦戦を強いられた。

 現在のヘルメットは、どのメーカーもバイザーの曇り防止など雨対策がかなり進んでいるが、今回の雨量は、出来たばかりのサーキットで路面が汚れているという条件も重なり、ほとんどの選手が視界不良に苦しんだのではないだろうか。それを防ぐにはグリッドの位置が重要であり、予選16番手のポル・エスパルガロは、スタート時点ですでに大きなハンディキャップを背負っていた。

 それにしても、KTMの進化は凄い。17年にモトGPクラスに参戦し、20年のチェコGPでブラッド・ビンダー(通算2勝)が初優勝。今大会のオリベイラ(4勝目)の優勝が通算6勝目となる。KTMの特筆すべきポイントは、路面のグリップが悪かったり、タイヤライフの厳しいレースで特に強みを発揮していること。ひと言で言えば「乗りやすい」バイクなのだろうと推測できるが、MotoGPに参戦した最後発メーカーとしては立派な成績である。

マルケスはまたしても長期欠場の危機

 そして、決勝日朝のウォームアップで転倒し、決勝を欠場したホンダのマルク・マルケスの、その後が心配される。マルケスは転倒した後、ロンボク島マタラムにある病院にヘリコプターで搬送され、検査を受けた。その結果は、脳震盪などで体調不良という診断だったが、その後、視力に違和感を感じたとのこと。そのためバルセロナに戻って眼科医の診察を受けた結果、昨年末に負傷した第4脳神経の麻痺が再発したことが確認された。昨年末よりも軽度という診断だが、回復までの時間などはこれからの検査と診察を待たなければならない。

 マルケスは、Moto2クラス時代の2011年のマレーシアGPの転倒の際に頭を打ち、第4脳神経の麻痺と右目を動かす神経をつなぐ手術などで回復まで5カ月を要した。第4脳神経が麻痺すると垂直方向の眼球運動が損なわれ、視界に2つの像が重複して見える複視の症状が出る。昨年11月にモトクロストレーニング中に頭を打った際は、自然回復を待つ治療法で約2カ月間を要した。

 今大会、マルケスは4回の転倒を喫した。金曜日のフリー走行では右11コーナー。土曜日の予選では、左12コーナーと左13コーナーで2度の転倒。そして日曜日(決勝)のウォームアップでは、左7コーナー。どれもハイスピードコーナーだが、7コーナーの転倒だけはハイサイドによるもので、マルケスは宙高く舞い上がった。「いままで経験した中でも激しい転倒のひとつだった」と本人が語るほどで、この転倒で頭を打ったマルケスは、第4脳神経に3度目のダメージを受けることになった。

【次ページ】 攻め続けた王者が支払った代償

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