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ドゥカティはなぜ速い? ギミック満載でホンダ、ヤマハなど日本勢を圧倒したイタリア製マシンの強さの理由

posted2021/12/04 11:01

 
ドゥカティはなぜ速い? ギミック満載でホンダ、ヤマハなど日本勢を圧倒したイタリア製マシンの強さの理由<Number Web> photograph by Satoshi Endo

コーナーにアプローチするドゥカティのエースライダー、バニャイア。ドゥカティならではの大ぶりなウイングレットが目立つ

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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 コロナ禍という厳しい状況の中で、ロードレース世界選手権(WGP)は2年目のシーズンを終えた。昨年は20戦を予定したが15戦(MotoGPクラスは14戦)で終了。今年も20戦を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大などで開催中止、日程の変更などが続き、全18戦の開催となった。そのなかで、ヤマハの若きエース、ファビオ・クアルタラロが5勝を含む10回の表彰台を獲得し、初タイトルを獲得した。

 ヤマハにとっては6年ぶり、フランス人としては最高峰クラスで初のチャンピオン誕生となり、ヨーロッパでは大きな話題となった。しかし、シーズン後半に快進撃を見せたのはドゥカティだった。ここ数年その兆しはあったが、最高峰クラスのイニシアチブは日本のバイクメーカーから完全にドゥカティに移行したことを感じさせた。

 最終戦バレンシアGPは、奇しくもその象徴となるレースだった。ドゥカティ勢の予選を振り返ると、初優勝を含み表彰台に3回立ったホルヘ・マルティンが今季2回目のPP(シーズン総合9位)。4勝を含み表彰台9回のフランチェスコ・バニャイアが2番手(同総合2位)。3番手に2勝を含み表彰台5回のジャック・ミラー(同総合4位)が続き、ドゥカティ勢がフロントローを独占。決勝でもバニャイア、マルティン、ミラーの順で表彰台を独占した。

 最終戦の舞台となったバレンシア・サーキットは、一周4.005kmのテクニカルコース。「速さを武器にする」ドゥカティにとっては、昨年まで特別アドバンテージのあるサーキットではなかった。しかし今年のドゥカティは、速さで獲得した好グリッドのアドバンテージを、そのまま活かしきるマシン性能を手に入れていた。

今季後半戦はドゥカティの独壇場だった

 その進化は、特に夏休み明けの後半戦での快進撃が証明している。ドゥカティは9戦中8戦でPPを獲得し、フロントロー独占が2回。ドゥカティ・ワークスのバニャイアが5戦連続PPを獲得し、チームメートのミラーと予選ワンツーが4回。そして、決勝ではバニャイアが4勝、マルティンが1勝で9戦中5勝を挙げている。チャンピオンを獲得したクアルタラロがいなければ、ドゥカティが圧勝というシーズンだった。

 振り返れば、4ストロークエンジンを搭載するMotoGPクラスがスタートした2002年の翌年、03年に参戦開始したドゥカティは、07年に当時最速ライダーの呼び声が高かったケーシー・ストーナーとブリヂストンタイヤという大きなアドバンテージを武器にタイトルを獲得した。この時点では日本の3メーカー、特にホンダとヤマハの後塵を拝するレースが多かったドゥカティだが、この10年はエアロパーツや車体関係に魅力的で斬新なアイディアを次々に投入し、ライバルメーカーを驚かせつつMotoGPマシンの流行を生み出し、着実に戦闘力を高めてきた。

【次ページ】 来季も強いドゥカティに日本勢はどう挑むか

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