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ファンでも“意外と知らない”格闘技リングの値段とは? 高校の学園祭から“リング職人”になった男が解説するこだわり《英国代表も使用》
posted2022/03/27 17:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
AFLO
年の瀬になるとビッグマッチ目白押しの格闘技界。ファンの目は“四角い戦場”リングに注がれる。このリング、すべて同じに見えるのだが、実はそうでもないらしい。
「リングはふたつと同じものがない、こだわりがつまった作品です」
そう言い切るのはリングの製造、レンタルを行なう「株式会社エコクラフト」の代表、渕佑介さん。格闘技に夢中になり、高校時代の学園祭でリングを自作したところから、この道に進んだ“リング一代男”。その評判を聞きつけて、近代ボクシング発祥国イギリス代表が東京五輪の練習用リングを発注した、知る人ぞ知るリング職人である。
渕さんが言うように、リングは千差万別。ロープだけでも多種にわたる。ボクシングは4本で、プロレスは3本。同じプロレスでも団体によって、その強度が変わるらしい。
「ロープはワイヤーを縒ってつくるのですが、求められる強度が違うので、ボクシングは6mm、プロレスは12mmとワイヤーの太さが大きく変わります。同じプロレスでも、レスラーの体格やファイトスタイルによってワイヤーの太さを変えることがあります」
ファンが“自宅用”で購入することも
多彩なロープワークを実現するために、プロレスには強靭なロープが採用される。素人が投げられると、骨折することさえある。
その一方で、ボクシングではマットの厚みにこだわる指導者が少なくない。
「ボクシングの強豪高校、大学から練習用リングを頼まれることが多いですが、インファイターを育てたい指導者は例えば40mmとマットを厚めにする。弾力があるので、相手の懐に飛び込むダッシュ力がつきますからね。その一方でアウトボクシングを教えたい指導者は、20mmと薄めにする。こちらは反発が少ないので、スピードに乗った軽快なステップワークが身につけられます」
世の中に、ふたつと同じものがないリング。当然、その値段もまちまちだが、英国代表に提供した五輪仕様(24フィート)のリングは350万円だったそうだ。
当連載で商品の値段を毎回紹介しているのは、「これ欲しい!」と思った読者のみなさんに参考にしてもらうため。リングを見ると居ても立ってもいられなくなる、格闘技ファンのみなさん。一家に一台、リングはいかがでしょうか。渕さんは過去、大のプロレスファンの夫婦から依頼されて、自宅用のプロレスリングを製作したこともあるそうですよ。