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“因縁の再戦”で3回KO勝ちを収めた寺地拳四朗の大変身… リベンジ成功の理由を参謀役が激白「ジャッジまかせにはしたくなかった」
posted2022/03/21 17:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
WBC世界ライトフライ級タイトルマッチが19日、京都市体育館で行われ、前王者の寺地拳四朗(BMB)がチャンピオンの矢吹正道(緑)に3回1分11秒KO勝ち。ダイレクトリマッチを制し、昨年9月に奪われた王座を取り戻した。
勝利のカギと指摘されているのが、ボクシングスタイルの変更だ。拳四朗の参謀役、加藤健太トレーナーの話をもとに、リベンジ成功の秘密を解き明かしてみたい。
「ガードを上げて頭を振るスタイル」に変貌した拳四朗
拳四朗は昨年9月、9度目の防衛戦で有利を伝えられながら矢吹に10回TKO負け。8度守った王座から陥落し、失意のどん底に突き落とされた。あのプロ初黒星からおよそ半年。拳四朗が故郷、京都のリングで生まれ変わった姿を見せた。
拳四朗の変化はゴングが鳴った瞬間に明らかになった。構えからして違う。これまでは上半身が立ったアップライトスタイルで、パンチが出しやすいようにガードはやや低め。それがガードを高く上げて、上半身は軽く前傾していた。
加藤トレーナーに説明してもらおう。
「今回の試合に向けては、まずガードを上げることを徹底しました。前回の試合では、後ろ重心で右をもらうことが多かったので、特に左のガードを上げることを徹底しました。そしてハイガードをするにしても、それだけだとガードの間を抜かれてしまうことがあるので頭を振る。今までは頭の位置を変えないスタイルだったので、ここを意識しました。前でよけるということです」
今まで拳四朗のガードが高くなかったのは、相手のパンチを足で外していたからだ。自慢のフットワークを駆使し、相手がパンチを打ってくるときはスッと下がってパンチを外す。相手がパンチを打ち込んだときにはその場にいないのだから、極論すればノーガードでもパンチをもらわない。攻めてはアップテンポに出入りを繰り返し、ジャブを軸に相手に少しずつダメージを与えていく。それが今までの拳四朗のボクシングだった。
ところが前回の試合ではこのボクシングがジャッジに評価されなかった。4回までにポイントを失い、中盤からプレッシャーを強めて前に出たものの、矢吹がカウンターをうまく合わせて応戦。9回に矢吹をあと一歩のところまで追い込んだが、10回に猛攻を浴びてTKO負けを喫してしまったのである。