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井上尚弥とノニト・ドネアの再戦が意味するものとは?「次は階級を上げることが目標」バンタム級で“最後の大一番”になる可能性も
posted2022/04/01 17:04
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Naoki Fukuda
WBAスーパー&IBF世界バンタム級チャンピオン、井上尚弥(大橋)が6月7日、さいたまスーパーアリーナで、WBC王者ノニト・ドネア(フィリピン)とバンタム級3団体統一戦を行うことが決まった。両者は2019年に対戦して激闘の末に井上が判定勝ち。世界5階級制覇王者のレジェンド、ドネアとの再戦は井上にとってどんな意味があるのだろうか――。
「ドネアとの再戦が決まって正直、自分の中でワクワクした。2019年11月7日(WBSS)決勝の日を鮮明に思い出しました。そしてドネアがここ2戦、WBC王者となり、2戦2KOという素晴らしい内容で勝利しているので、ドネアに対する興味を持ちましたし、モチベーションもかなり上げてくれる存在になったと思います」
3月30日、都内で開かれた記者会見で、井上はドネアと再戦できる喜びを口にした。その言葉からは「ドネアこそ自分が対戦するにふさわしい選手」という思いが伝わってくる。井上はドネア戦後、3試合戦っていずれもKOもしくはTKO勝ちながら、挑戦者はいずれも格下で、本人も昨年12月の試合後は「正直モチベーションは厳しかった」と発言していた。リスクの高い実力者こそが“モンスター”の求める相手なのだ。
井上との試合で「生き返った」と語るドネア
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ドネアは井上戦後、無敗のWBC王者ノルディーヌ・ウバーリ(フランス)と無敗ホープのレイマート・ガバリョ(フィリピン)にいずれもKO勝ち。パフォーマンスの良さが39歳のベテラン王者に自信を与えている。
「あの試合(井上との第1戦)が私を生き返らせてくれた。あの試合で本当に戻ってきたという気持ちになった」(井上の記者会見でのビデオメッセージから)
かつて“フィリピンの閃光”と評されたドネアはフライ級からフェザー級まで制した元5階級制覇王者だ。同国の複数階級制覇といえば6階級を制したマニー・パッキャオが有名だが、それに続く快挙を達成したのがドネアである。しかし井上と試合をする前はフェザー級で敗北を喫するなど低迷した。「もうドネアの時代は終わった」という見方が説得力を持っていた。