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「二刀流でシーズン完遂」のウラに“大谷翔平流ルーティン”…元メジャーリーガー岩村明憲が指摘「打率も打点も勝ち星も防御率も1位になりたいんじゃないかな」
posted2022/03/22 11:03
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
Getty Images
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“ホームラン46本”を打てた理由
ホームラン数の「46」はとてつもない数字。ケガの影響があった昨年までとは違い、試合を重ねて打席数が増えてくればホームランは自ずと増えてくるとは思っていましたが、これほどの数を想像した人はいなかったのではないでしょうか。
「打者・大谷」の進化の理由のひとつは、打席での「タイミングの取り方」にあると思います。2018年のメジャー移籍後は、右足を上げる打法からノーステップに切り替えて対応してきました。昨年はもう一度足を上げる形に戻してみるなど試行錯誤を続けていましたが、今季は再びノーステップに戻し、ボールにコンタクトするまでの動作をシンプルにしました。
自分主導でスムーズに合わせられるようになったことで、フルスイングできる球も増えた。それが「46」という数字に直結したと思います。そのべースには、下半身をしっかりと鍛え上げたことがある。'18年オフに右ひじのトミー・ジョン手術を受けた後、膝も痛めてリハビリ期間がありましたが、そこで体全体のバランスを見直してトレーニングしたのでしょう。ある意味でこれは「怪我の功名」とも言えます。
ホームランダービーで生まれた“クセ”
今シーズン序盤のホームランは、センターから右中間、左中間へ、惚れ惚れする打球が飛んでいました。元来スイングワークの「前」が大きく飛距離は出やすいですが、リーチの長さを存分に生かし、対戦相手の投手もお手上げという当たりでした。後半戦に本塁打のペースが落ちてしまったのは、やはりオールスターゲームのホームランダービーの影響があると思います。
フアン・ソトと対決した場面を思い出してほしいのですが、大谷君は開始1分くらいまで、ホームランが出なかったですよね。スタンドに入れなくてはいけない、という使命感に力んで、ボールにトップスピンが加わり、打球が上がりづらくなっていた。ホームランダービー以降、それが悪いクセになり、後半戦はトップスピンの打球のままスタンドインさせていた。打球方向のデータを見ても、明らかに右中間から右翼ポール際への打球が増えているんですよ。