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オリンピックへの道BACK NUMBER
高梨沙羅と五輪の涙…世界一のジャンパーが自問自答してきた“なぜ五輪で勝てないのか?”「化粧、服装もそう。人間力を高めるため」
posted2022/03/11 17:46
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
2012-2013シーズンでワールドカップ総合優勝を果たし、“世界一のジャンパー”となった高梨沙羅は、2013-2014シーズンを迎えた。4年に一度しかないシーズン、そう、五輪シーズンである。高梨にとって初めて臨む1年であり、女子ジャンプが初めて開催される五輪でもある。ことさら重みを感じていた。
いざシーズンが始まると、高梨はさらに成長した姿を見せる。
ソチ五輪までに行なわれたワールドカップ個人戦では13戦のうち実に10勝。2位2回、3位1回と表彰台に上がらなかったことは一度もなく、驚異的な成績をあげたのである。
こうして、ソチ大会直前の2戦でも優勝を果たした高梨は、「金メダルに最も近い選手」として大きな注目を集めることになった。
初の五輪は不利な追い風…それでも「自分の責任です」
開会式からの4日後の2月11日、オリンピックで1回目の女子ジャンプは行なわれた。金メダル候補筆頭と目されていた高梨は、まさかの4位に終わった。
客観的に見れば、風の影響が大きかったのは否めない。屋外競技であり気象条件に左右されるジャンプは運不運も出てくる。高梨は上位の中でただ1人、2本とも不利な追い風にあたっていた。
それでも、試合後に高梨ははっきりと答えた。
「自分の責任です」
運がどうこう以前に、募った悔いがあった。自分が自分ではないような、プレッシャーで本来のジャンプができなかったという思いだ。周囲から大きな期待を寄せられ、自身も自分に期待していたのに、“自分”に勝てなかった。なぜ負けてしまったのか。一体、何が足りなかったか――。
「やっぱり最終的に勝敗を決めるのは『人間力』」
自問自答する中で、そのとっかかりを得たのは2016年の春のことだった。オリンピックで実績を残した選手らを講師に招いて、国立スポーツ科学センターで講習会が開かれた。参加すると、視界が開けた気がした。