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“プーチンから国家勲章をもらったFIFA会長”がウクライナ侵攻に“しどろもどろで及び腰発言”なワケ〈ロシアW杯を筆頭に…〉 

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2022/03/11 17:01

“プーチンから国家勲章をもらったFIFA会長”がウクライナ侵攻に“しどろもどろで及び腰発言”なワケ〈ロシアW杯を筆頭に…〉<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

2016年、ロシアW杯に向けて面会したプーチン氏とインファンティーノFIFA会長(代表撮影)

 昨年には、世界ドーピング防止機構(WADA)の反対を顧みず、モスクワでビーチサッカーW杯を開催したうえ、サッカーW杯を2年ごとに行うプランまでぶち上げている(この発案者も、反体制派の著名記者を殺害した疑いが持たれている国家、サウジアラビアの協会幹部だ)。

「フットボールの未来のために」と銘打たれたその計画は、欧州や南米の連盟、主要クラブ、選手や監督の大部分から反対されたが、インファンティーノは「アフリカ人に希望を与え、彼らが地中海を渡ろうとして、死んでしまうようなことがなくなるため」にも必要だと、飛躍しすぎた理由をつけてさらなる顰蹙を買っている。大会を2年ごとに開催すれば、FIFAの利益増が莫大になることは誰の目にも明らかだというのに。

 スポーツは本来、人々を結びつけ、喜びを共有するものだ。時には、2000年代のディディエ・ドログバとコートジボワール代表のように、数年続いた内戦を終わらせる力さえ発揮する。

 ところが、物事が複雑に絡み合う現代では、危険な独裁者の悪行を覆い隠し、イメージアップを助長する手段にも使われるようになってしまった。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は米『CNN』のインタビューで、「これは民主社会と自由に対する戦争だ」と言った。米国のジョー・バイデン大統領も「民主制と独裁制の戦い」と同調している。

 それはつまり、あなたや私にも関わりがあるということだ。私たちの国では、そうした意識が希薄に感じられることもあるが、これは決して対岸の火事ではない。スポーツウォッシングもまた、そう遠くない場所で進行していないとは言い切れないはずだ。

 フットボールが「民衆のスポーツ(people's sports)」ならば、それを統括する連盟のリーダーは、友情を誓い合ったプーチンにすぐにでも連絡して、狂った所業をただちにやめさせるべきだ。このスポーツと自由を好むひとりの民としては、非力ながら、同じ価値観を持つウクライナを全面的に支持したい。<アブラモビッチ編に続く>

#2に続く
2270億円をチェルシーに投じた「石油王アブラモビッチ」が資産凍結されて… 再燃する“プーチン・サークルの一員”疑惑

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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