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“プーチンから国家勲章をもらったFIFA会長”がウクライナ侵攻に“しどろもどろで及び腰発言”なワケ〈ロシアW杯を筆頭に…〉

posted2022/03/11 17:01

 
“プーチンから国家勲章をもらったFIFA会長”がウクライナ侵攻に“しどろもどろで及び腰発言”なワケ〈ロシアW杯を筆頭に…〉<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

2016年、ロシアW杯に向けて面会したプーチン氏とインファンティーノFIFA会長(代表撮影)

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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REUTERS/AFLO

ウクライナ侵攻はサッカー界にも大きな影を落としている。その中でプーチン氏と関係が深いとされるジャンニ・インファンティーノFIFA会長、チェルシーのロマン・アブラモビッチ氏の視点に立つと、サッカー界の闇が垣間見えてくる(全2回/アブラモビッチ編も)

 この21世紀の現在に、まさか戦争なんて──。

 今年に入ってロシア軍がウクライナ国境付近で臨戦態勢を取り始めてからも、実際に火蓋が切って落とされることになるとは、ほとんど誰も予想していなかったのではないか。欧米のメディアでは、米国の諜報機関がロシア軍の攻撃を予想していると告げるニュースも流れていたが、そんな選択は国際的に誰の理解も得られない。柔道の黒帯を持つ69歳の“独裁者”も、そこまで愚かではないはずだ。

 おそらく、そんなふうに考えていた人が多かったと思う。そしてなかには、こんなことを思い出した人もいるかもしれない。

〈ロシアは2014年にソチ五輪を、2018年にW杯を開催した国だ。私たちと同じ常識を持つ人々に違いない。首尾よく国際大会を執り行ったあの美しい国の人々が、戦争なんて仕掛けるはずがない〉

 ウラジーミル・プーチンの狙いは、そこにあったのだろう。

 世界的なスポーツイベントを開催したのは、国威発揚のためだけではなく、自国が“平和の祭典”をホストできる真っ当な国家であり、世界中の人々と同じ価値観を持っているとアピールするためでもあった。しかしそのようにして国家の対外的なイメージを高める裏では、帝国──この単語を比喩以外で使うのは初めてだ──を建造する企みを着々と進め、ついには隣国ウクライナに全面的に侵攻し、罪のない人々を殺し始めた。

 つまり今、世界はスポーツウォッシングの実害を、まざまざと目にしているわけだ。

「スポーツウォッシング」という闇

 フットボールをはじめ、スポーツが人々に与える影響力の大きさに、世界中の権力者が気づき、それを利用するようになって久しい。国家や強力な個人が抱える闇や不正、とりわけ人権問題を覆い隠すためにスポーツを悪用する行為は、【sportswashing / スポーツウォッシング】と定義されるようになった。

 近年と近未来の五輪やW杯の多くが、そのような意図を持った国家で開催され、開催されようとしていると言われる。だが筆者を含め、苦もなく平和を享受しているこの国の多くの人々にとって、それがどのような状況を生んでいるのかは、想像こそできたとしても、実態としては掴みづらかったと思う。

【次ページ】 FIFA会長「我々の実りある協力と関係の始まり」

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