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球体とリズムBACK NUMBER
“プーチンから国家勲章をもらったFIFA会長”がウクライナ侵攻に“しどろもどろで及び腰発言”なワケ〈ロシアW杯を筆頭に…〉
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byREUTERS/AFLO
posted2022/03/11 17:01
2016年、ロシアW杯に向けて面会したプーチン氏とインファンティーノFIFA会長(代表撮影)
でもウクライナの悲惨な現状を目の当たりにしている今なら、それが重大な帰結に繋がってしまうこともあると理解できる。なかでも世界でもっとも愛されているスポーツ、フットボールとそれを統括する団体が、ロシア政府の印象の向上に加担してしまったことは厳然たる事実だ。
FIFA会長「我々の実りある協力と関係の始まり」
現在、ウクライナでロシア軍に残虐な行為を命じているプーチンから、『友人としての国家勲章』を誇らしげに受け取ったのは(※返上したかは不明)、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長だ。現在51歳のスイス人は2019年の授与式で、嬉々として次のように語ったと米『AP通信』は伝えている。
「これは終わりではなく、我々(FIFAとロシア)の実りある協力と関係の始まりだ」
また2018年夏のロシアW杯では、今や世界中の人々がロシアに「恋をしている」とまで褒め称え、プーチンと熱い抱擁を交わしている。
ただしその4年前にロシア政府は、ウクライナの領土であるクリミア半島を併合。ウクライナ東部では飛行中のマレーシア航空の旅客機がミサイルで撃ち落とされる事件も起きている(ロシア政府は関与を否定しているが)。
ウクライナへの侵攻が始まった週、そうした当時の状況と起きてしまっている現状を踏まえ、ロシアからW杯開催権を剥奪しなかったことを後悔していないのか、と同通信社の記者から問われたインファンティーノは、しどろもどろにこう答えている。
「我々は常に……スポーツの役割について……考えている。特に普段は繋がりがなかったり……いがみ合っているような国や人々を……平和な場所に連れ出すことを……。(中略)私は固くそう信じている……。フットボールは……民衆のスポーツだ」
「2年に一度のW杯」構想もFIFAの利益最優先では
この人は、FIFAが腐り切った末に浄化を図ろうとして据えたはずの会長だ。ロシアにW杯開催権を与えたのは、前任者ゼップ・ブラッターでもある。だが「民衆のスポーツ」を統括する団体が倫理性や普通の人々(民衆)よりも、私利やパワフルな権力者を優先する体質は、あまり変わっていないように見える。