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『プロレス社会学のススメ――コロナ時代を読み解くヒント』直木賞作家も「借りがある」。プロレスを再検証し、見えた魅力。
text by
佐藤究Kiwamu Sato
photograph bySports Graphic Number
posted2022/03/12 07:00
斎藤文彦、プチ鹿島著 ホーム社 2090円『プロレス社会学のススメ――コロナ時代を読み解くヒント』
無頼で知られるアメリカの作家チャールズ・ブコウスキーは、ラジオから流れてくるクラシック音楽が好きだった。お気に入りの作曲家はマーラー。最晩年の日記に彼はこう書いている。
「ありがとう、マーラー、わたしはあなたに借りがある。そしてわたしには決して返せそうもない」(『死をポケットに入れて』)
シンプルで美しい文章だ。同時にここで書かれた想いは、僕の「プロレス」に対する想いとまったく同じである。「マーラー」を「プロレス」に置き換えるだけでいい。ありがとう、プロレス、僕はあなたに借りがある。そして僕には決して返せそうもない――。