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最強助っ人レロン・リーが語る落合博満“40年来ずっと忘れられない姿”「勝者は嫌われがち」「私がいなければ打点王は無理だったでしょ(笑)」
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/03/09 11:01
80年代、ロッテの中軸を担った“史上最強助っ人”レロン・リーと落合博満。現在アメリカで暮らすリーが、現役時代のエピソードと落合の実像を語った
「概して“勝者”は嫌われがちです。突出した選手になれば、技術力も精神力も周りの理解を超えることが多い。オチもそうでした。ロッテ時代の彼は本当に圧倒的だった。三冠王もそうですが、85、86年はホームランを50本以上打っているわけですから」
落合はチームを移りながら長年にわたって活躍し続けた。監督としても中日を指揮した8年間すべてでAクラス入り。4度の優勝、2007年には球団53年ぶりの日本一に導いた。現役時代、突出した成績を残した選手が監督としてチームを率いる難しさ――。リーの頭に浮かんだのが金田だ。
「私のロッテ在籍時代の最初の監督・金田さんに似ていると思います。現役時代に400勝を挙げた。となれば、並の選手には理解できない技術や指導論があるものです。金田さんも誤解されていた点が多かったと思います。実は私も最初、彼の言動を消化できないことがあった。でもその後、少しずつ目指す野球がわかってきて、今では尊敬する監督の一人です。最初に金田さんと出会えたおかげでいい野球人生を送ることができました。
オチに話を戻すと、現役時代、彼の日常はすべて『勝つため』にありました。無駄なことにはまったく関心がないので、その姿勢を嫌う選手もいた。勝敗は大事だけど野球はエンターテイメントじゃないか、と。でもオチは何よりも勝ちたかった。そのためには余計なことをせず、徹底的な準備が必要だということを、彼は誰よりも理解していたんです」
「勝者には一喜一憂しない人が多いんです」
リーの脳裏に焼きつく落合の姿は、ベンチでの振る舞いだと言う。
「よく覚えているのが、ホームランを打っても三振を喫しても、オチはベンチでの雰囲気がまるで同じだったんですよ。よく『平常心が大事』と言いますが、言葉にするのは簡単でも、実践するのは難しい。でもこれは僕の実感ですが、勝者には一喜一憂しない人が多いんです。ホームランを打ったらもっと喜べばいいのに、もっと他の選手と親しくすればいいのに、と考える人にとっては理解できないでしょうが……」
才能開花のきっかけを与えてくれた王貞治については真面目な面持ちで語っていたリーも、落合の話になると頬が緩む。クリーンアップを組んだ戦友と再会する日が待ち遠しいようだ。
「今度私が日本に行くとき、一緒に和牛を食べる約束をしたんです。きっとそこでは、彼の3度の三冠王が前を打つ“3番リー”のお陰だったことを思い出して、ご馳走してくれると思いますよ(笑)」
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