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ロックンロールとしてのベースボールBACK NUMBER
「嫌われた監督」落合博満に“愛された音楽”とは 信子夫人とのデュエット曲に自薦クラシックCD…ど真ん中な「オレ流志向」
posted2021/12/26 17:05
text by
スージー鈴木Suzie Suzuki
photograph by
Naoya Sanuki
2021年のシーズンMVPは、セ・リーグ:スワローズ・村上宗隆、パ・リーグ:バファローズ・山本由伸に決定したが、今年の「野球本MVP」を選ぶとすれば、個人的には、鈴木忠平・著『嫌われた監督』(小社刊)と中川右介・著『プロ野球「経営」全史』(日本実業出版社)で決まりだ。
特に『嫌われた監督』の方は、『週刊文春』連載時から、毎週毎週食い入るように読んだ。タイトルにもあるように嫌われ、疎んじられ、それでも、勝利という最終目標に向かって、寄り道せずまっすぐに歩いていく落合博満の生き方を、タイトルに反して、最終的には大好きになってしまう本である。
今回は、野球の側面ではなく、音楽的側面に寄り道しながら、私なりの落合博満論を語ってみたいと思う。あ、その前にも寄り道を一つ。『嫌われた監督』にある音楽的、いやロックンロール的エピソードと言えば、ここだ。
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《やがて宇野(註:勝)は薄明かりのカウンターにグラスを置くと、マイクを手に取った。捨て猫みたいな二人の純愛を歌った、尾崎豊のスローバラードが十八番だった。鼻にかかった低音は空気を心地良く震わせ、その場にいる者を酔わせる。》
背番号七番で鳴らした宇野勝が、尾崎豊の『I LOVE YOU』を十八番としていたという事実。ここは、主人公・落合博満の人間物語とほぼ無関係なものの、それでもあの本の中で最も印象的なシーンの一つである。
『落合博満ベストセレクション』というアルバムがある
さて、その、肝心の落合博満に話を戻す。落合博満が歌手として活動していたことは、知られていると思う。残念ながら、オリコンチャートに上がるほどにヒットしたシングルはなかったのだが、作品数はそれなりに多く、何と『落合博満ベストセレクション』というアルバムまである。私は持っている。
『落合博満ベストセレクション』収録曲(日本コロムビア/1998年発売)
#1.霧の別れ(デュエット:若山かずさ)
#2.落涙
#3.縁歌酒(デュエット:多岐川舞子)
#4.めぐり逢い
#5.涙 渇くまで(デュエット:林るり子)
#6.旅路のひと
#7.そんなふたりのラブソング(デュエット:落合信子)
#8.サムライ街道
#9.きずな橋(デュエット:多岐川舞子)
#10.男のララバイ
#11.恋の広小路(デュエット:中村美律子)
#12.夜明川
#13.抱かれて乾杯(デュエット:若山かずさ)
#14.息子へ
これを読んでいる皆さんが(私も)、口ずさめる曲は、正直1つもないと思われるが、それでも、ずらっと並んだ文字列の迫力と、デュエット・パートナーのきらびやかさ(特に#7)は、「ベストセレクション」の名にふさわしいものだ。