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最強助っ人レロン・リーが語る落合博満“40年来ずっと忘れられない姿”「勝者は嫌われがち」「私がいなければ打点王は無理だったでしょ(笑)」
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/03/09 11:01
80年代、ロッテの中軸を担った“史上最強助っ人”レロン・リーと落合博満。現在アメリカで暮らすリーが、現役時代のエピソードと落合の実像を語った
「王さんのお陰です」
王貞治……? と聞き返してしまった。80年に引退した王と77年ロッテ入団のリーは、現役時代が4年間重なっている。しかし、王はセ・リーグ(巨人)で、リーはパ・リーグ。当時は交流戦もなければ、日本シリーズで戦ったわけでもない。2人の接点が思いつかないでいると、意外なエピソードを教えてくれた。
「1年目のシーズン前に、巨人とのオープン戦がありました。金田(正一)監督とジャイアンツの長嶋(茂雄)監督は元チームメイトだったので、会話していて。2人が私と王さんをつなげてくれたんです。そこで同じ左バッターの王さんからアドバイスをいただきました。王さんが言うには打撃のポイントは右手にあると。『バットを振るときに下の右手から動かすイメージを持つといい』とおっしゃったんです。驚きました。それまでスイングを始動するのは、力を出しやすい上の利き手(左手)だと思っていましたから。
でも王さんによれば、『下の右手を意識すれば力みがなくなってファウルボールが減る。その結果、ホームランが増える』と。さっそく実践してみたら、引っ張ったボールがファウルにならなくなった。以来、右手を鍛えるために、食事や書くときなど、日常生活で右手を使うことを心がけました。1年目の本塁打王を獲得できたのは、間違いなく王さんのお陰です」
リーは1987年シーズンをもって現役を引退し、アメリカに帰国。現在はアトランタ・ブレーブスのスカウトと打撃インストラクターを務めながら、カリフォルニア州サクラメントの郊外で日本人妻と暮らしている。ロッテ時代同様、休日はもっぱら趣味の模型飛行機に夢中。自ら組み立てた飛行機を専用の公園で飛ばす。娘2人は社会人になり、「孫の誕生が待ち遠しい」と微笑む。
レロン・リーが見た「現役時代の落合博満」
話は冒頭に戻る。そもそもリーが落合に連絡した理由は、昨年出版された書籍『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)が日本で話題になっていることを人づてに聞き、落合の近況が気になったからだった。