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進取の将棋BACK NUMBER
「対局後に塾に行くことも」「将棋のおかげで考える習慣が」 中学受験と奨励会…中村太地七段が“12歳で文武両道”できた理由
posted2022/03/05 11:03
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by
Getty Images/Tomosuke Imai
受験シーズンを経て、卒業式や入学式――2月から新年度にかけて、学生の皆さんは様々な転機を迎えているかと思います。
「棋士の方々はどんな経験を?」と聞かれたのですが、私自身、実は経験したのは中学受験(早稲田実業中等部に入学)のみです。大学まで内部進学でしたので、何か参考になるかと言われると不安な限りなのですが……勉強との両立や、棋士の学生生活をお話しできればと思います。
最近は現役棋士、さらに奨励会(プロ棋士を目指す研修機関)でも学業と両立する人が非常に増えてきました。2020年に棋士となった谷合廣紀四段は東京大学大学院でAI研究をするなど、非常に幅広い知識を有している印象です。私の師匠・米長邦雄永世棋聖が言ったとされている「兄貴は頭が悪いから東大に行った」という頃から、価値観が変化しているのでしょうね(笑)。
両親と約束した「大学進学」と将棋に向き合うための選択
冗談はさておき、私自身の幼少期を思い出すと――プロ棋士を目指すにあたって、両親と1つだけ約束したことがあります。それは「大学に進学する」でした。
それこそ羽生善治先生や藤井聡太竜王のように、大学に行かず将棋に専念するという選択肢もあったと思いますが、親は「もしも」のことを考えてくれていた、と推測します。野球やサッカーなどの競技でも大学進学を選択する方がいます。スポーツの場合は高校時点でお声がかからなかったという側面もあるかと思いますが、大学で幅広い観点を持てるという意味では、似た価値観で選択しているのかもしれません。
その中で私が中学受験を選んだ理由の1つとして、「将棋に向き合う」という面を重視した部分があります。将棋の力が一番伸びるのは、高校生の時期と言われています。その時期に大学受験と両立するのは大変な部分があるので、早めに中学受験をして、その後は将棋に専念できるようにしよう、と。小学生ながら意外に計画的な面を持ち合わせていましたね。
中学受験と奨励会、どんなスケジュールで勉強を?
ただ、中学受験がトントン拍子だったかと言うと、決してそんなことはありませんでした。特に小学校6年生の頃は、塾に通って受験勉強をしながら、奨励会受験にも臨むという“二刀流”でしたので。