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進取の将棋BACK NUMBER
早大卒・中村太地七段が語る“結構オチャメ”な棋士の学生生活 「テストと対局が同日だと大変」「時効ですが授業をサボって…」
posted2022/03/05 11:04
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph by
Tomosuke Imai/BUNGEISHUNJU
奨励会受験と中学受験を両立した後、早稲田実業に入学しました。中高、そして大学での10年間も将棋と向き合いながらの学生生活でした。今思うと校風が私自身にも合っていたのかなと思います。棋士の学生生活に興味を持たれる将棋ファンも多いとのことですので、卒業・入学シーズンということでその思い出話ができればと思います。
早実時代、斎藤佑樹投手と同学年でした
早実は部活を頑張っている生徒が多いです。特に皆さんも大きく印象に残っているのは、2006年夏の甲子園で全国優勝した野球部でしょうか。斎藤佑樹投手が獅子奮迅の活躍を見せたわけですが、同学年の1人としてとても刺激を受けた出来事ですね。実際に甲子園へと観戦に訪れたのは学生時代のいい思い出です。
サッカー部や陸上部なども強い中で、勉強もスポーツも……といわゆる「文武両道」の風土がありました。早実の特徴としてはスポーツ推薦で入った、将棋をやっているからと言って、勉強が免除されるということは全くない点です。全員が同じ授業、テストを受けて、友人の頑張りに触発されて自分も頑張らなきゃ、という気持ちにはなっていました。
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ちなみに部活が強い学校だと「○○選手 全国大会出場」などの垂れ幕が学校に吊るされますよね。ただ私自身は部活としての活動ではなく奨励会員だったので、昇級しても学校で表彰されるなどはなく、日の目を見ることはありませんでした(笑)。もしかしたら藤井(聡太)竜王などの認知度アップもあって、今では全国的にも少しずつ変わっているかもしれませんけどね。
高3で棋士となった一方で、平日に休まざるを得ない日が
高校3年時に四段となり、棋士としての道が開けました。それと同じくして学校生活では、大学での学部を決めるテストというものも、大きな出来事としてありました。付属校なので早稲田大学にいけるのはほぼ間違いない一方で、第一志望に行けるかどうか、を決めるための考査が1年間かけて実施されます。一発勝負の試験がありつつ、普段の通信簿の成績も加味されるものです。
ただ、私の場合、中高を通じて「当時の奨励会だと月に2回は平日を休まざるを得ない」という状況でした。その分だけ授業でなるべく集中して聞いて、家で学校の勉強をしないで済むような気合を入れて臨んでいました。
とはいえ、奨励会があった日は授業を受けられません。ノートが取れなくなり、授業についていけなくなりかけたこともありました。その際には友達がノートを写させてくれましたし、将棋に理解のある先生だと補習のテストやレポートで対応してくれました。周囲の助けがあったからこそ、奨励会での活動もできたのだと思います。
そういった環境に恵まれたこともあって普段の成績を上手く取ることができていた。それは進学するうえで大きかったかもしれません。さらに自宅に帰った際、将棋の勉強時間を作ること、ゆくゆくは大学で私がやりたいと考えていた勉強をできることにもつながったと思います。