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プルシェンコ発言「選手除外は差別だ」は妥当か?“金メダルなし”にプーチンが激怒した日《ロシアこそ国家とスポーツを結び付けてきた皮肉》
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byGetty Images
posted2022/03/03 11:30
ロシアの世界選手権からの除外を「差別」だと訴えたプルシェンコと、握手を交わすプーチン
国家のためにアスリートがいるわけではない
そうした理想を追求するための前提は、国家のためにアスリートがいるのではなく、アスリートは個々に異なり、国家同士が競うのではなくアスリート自身が競い合っているということだ。プルシェンコの主張の全体、あるいはタラソワの言葉には、まず「ロシア」を押し出し、そのあとにアスリートの立場への思いがあるようにもどこか感じられる。もし今回の決定に反論するなら、「ロシア人のいない世界選手権」の価値云々よりも、個々のアスリートについてより語るべきであるだろう。
そもそも平和でなければスポーツは成り立たないことを考えれば、まず訴えるべきは侵攻を起こしたプーチンにほかならない。
今回の発表の前、ロシアはワリエワを世界選手権に出場させる意向を持っていた。ドーピング違反で北京五輪でも暫定的に出場となり、成績も暫定とされているが、その状態で世界選手権に出場することの可否が問題となっていた。皮肉なことに、その問題は先送りされたことになる。
とにかく、ロシアの選手が出場できないことが発表され、フィギュアスケートの世界選手権は間もなく開幕する。また、他の競技の大会も、ロシアの選手なしで開催されていく――ウクライナの一刻も早い平和を祈らざるを得ない。
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