- #1
- #2
Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
ワリエワ騒動で話題 …“鬼コーチ”エテリ「泣き出す生徒は数え切れない」それでも全国から生徒が集まるのはなぜ?〈ロシア強豪クラブを潜入取材〉
posted2022/02/19 11:05
text by
栗田智Satoshi Kurita
photograph by
Getty Images
〈初出:2018年2月1日発売号「[ロシア虎の穴潜入レポート]メドベデワ&ザギトワ『天才少女の作り方』」/肩書などはすべて当時〉
女王メドベデワと新星ザギトワ。圧倒的演技で平昌五輪の金を争う2人がともに拠点とするのが、ロシアの虎の穴「サンボ70 フルスタリヌィ」だ。現地潜入取材と、コーチやスタッフの証言をもとに、次々と天才少女が生まれる強さの秘密に迫った。
◆◆◆
メデベデワ、ザギトワを輩出した「サンボ70」とは
世界選手権2連覇中の女王エフゲニア・メドベデワ。そして、今季シニア1年目にして一気に頭角を現した新星アリーナ・ザギトワ。平昌五輪でメダル最有力候補とされる2人の天才少女がともに所属するのが、モスクワにある「サンボ70」と呼ばれるトップアスリート養成学校だ。
「サンボ70」という一風変わった名前は、サンボ世界選手権金メダリスト、ダビド・ルドマンが1970年に創立したことにちなむ。現在はサンボだけでなく新体操、水泳、陸上など22種目もの競技において国の援助のもと育成が推し進められている。
その一部門としてあるのが「フルスタリヌィ(ロシア語でクリスタル)」と呼ばれるフィギュアスケート専用施設だ。五輪へ向けた選手育成を目的として2003年に設立され、当初は「第37青少年スポーツ学校」という名称だったが、'13年にサンボ70傘下に統合された。メドベデワもザギトワもここから徒歩5分ほどの自宅に住み、週6日で練習に通っている。
世界トップレベルの選手を次々と輩出するフルスタリヌィとは、いったいどんな施設なのか。そこでは、どのような育成がなされているのだろうか。
2008年にエテリが専属コーチに就任
フルスタリヌィが本格的に始動したのは今から10年前の'08年のことだ。現在コーチを務めるエテリ・トゥトベリーゼの招聘がひとつの契機となった。練習場所が十分に確保できなくなったことによる移籍だったが、このとき8歳のメドベデワもコーチの後を追って移ってきている。