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プルシェンコ発言「選手除外は差別だ」は妥当か?“金メダルなし”にプーチンが激怒した日《ロシアこそ国家とスポーツを結び付けてきた皮肉》

posted2022/03/03 11:30

 
プルシェンコ発言「選手除外は差別だ」は妥当か?“金メダルなし”にプーチンが激怒した日《ロシアこそ国家とスポーツを結び付けてきた皮肉》<Number Web> photograph by Getty Images

ロシアの世界選手権からの除外を「差別」だと訴えたプルシェンコと、握手を交わすプーチン

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 国際スケート連盟(ISU)は3月1日、ウクライナに侵攻したロシア、その支援をしたベラルーシの国際大会参加を無期限で認めないことを決めた。国際オリンピック委員会(IOC)が各競技団体に対し、両国を大会から除外するよう勧告していたのを受けての決定だ。

 この発表は瞬く間に大きな注目を集めることになった。3月21日からフランス・モンペリエでフィギュアスケートの世界選手権が開幕するが、この大会にもロシアの選手は出場できなくなったからだ。ペアやアイスダンスにも有力選手が少なくないが、とりわけ、女子は北京五輪金メダルのアンナ・シェルバコワ、銀メダルのアレクサンドラ・トゥルソワ、そしてロシアが出場させるとしていたカミラ・ワリエワがいるだけに、衝撃は大きかった。

プルシェンコ「スポーツと政治を混同するのはよくない」

 ロシア国内からも反応が起きている。その多くは、この決定の不当を訴えるものだ。

 ロシアのメディア「スポルトエクスプレス」によれば、世界的にも著名なコーチであるタチアナ・タラソワは「私たちの選手は世界選手権を含めすべての競技会の宝石です。ロシア人のいない世界選手権は価値がなくなるのは間違いない」と語ったという。

 また、トリノ五輪金メダルをはじめ数々の実績を残してきたエフゲニー・プルシェンコはこう主張している。

「スポーツと政治を混同するのはよくないし、アスリートを罰したり、パフォーマンスや競技を行う権利を奪ったりしてはいけません。これは差別であり、アスリートの権利を直接的に侵害するものです」

ロシアの国際大会除外は“差別”なのか?

 プルシェンコの訴えには「差別」とある。ロシアオリンピック委員会(ROC)もIOCの勧告に対し、「民族差別」と批判していることから、ロシア内には「差別」として捉える向きが一定以上あることをうかがわせる。

 ただ、IOCの勧告およびそれに伴うISUをはじめとする各競技団体の決定は、国家に対するものであって、それを民族差別として反論するのは、意図的に飛躍させている感がある。

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