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マルケス「どん底から抜け出せるんじゃないか」開幕直前MotoGPテストの慎重な走りに見えた王座奪還の可能性
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/02/20 11:00
テストでは慎重な走りに徹したように見えたマルケスだが、最終日のロングランのアベレージタイムは参加ライダー中トップだった
マレーシアテストでは、視力障害で2カ月半トレーニングが出来なかったとはいえ、昨年3勝を挙げて本来の走りに戻りつつあるマルケスのことだから、すぐにニューマシンを乗りこなすのではないかと思っていた。しかし、テスト初日に低速コーナーで2度の転倒を喫した。過去のマルケスがライバルに対して絶対的な強さを見せていた、ブレーキング開始からクリッピングポイントのアプローチでの転倒だった。
そのためなのだろう。それからのマルケスはブレーキを掛けている時間が長く、しっかりスピードを落としてからマシンを寝かせていた。2022年型RC213Vの大きな改良点は、昨年課題だったリアのトラクションだ。昨年はリアのトラクションが不足し、結果的に加速、直線スピードでパフォーマンスを生かせず、ブレーキングで無理をすることで転倒につながった。今年はエンジンパワーをしっかり活かす車体作りが成功したと言われているが、マルケスはその違いに戸惑ったのだろう。しかし、その転倒が功を奏したのか、その後はフロントのフィーリングの調整に多くの時間を割き、ペースを上げることに成功した。
テスト最終日に見えた光明
最後のテストになったインドネシアは、ニューサーキットにありがちな汚れなど路面コンディションが非常に悪く、加えて、湿気と暑さもライダーたちを苦しめた。しかし、このテストでマルケスは黙々とメニューをこなし、テスト最終日には合計5日間のテストの締めくくりとばかりにロングランに徹した。
19年シーズン終了後に手術した右肩の状態が完全ではなく、もちろん、マルケスが経験したもっとも大きな怪我である上腕の骨折による右腕の回復も完全ではない。「身体が完調ではないし、アタックするのは体力がいる」とマルケスはアタックしなかった理由をコメントしたが、マルケスの常に限界に挑戦する走りが影を潜めたのは、そればかりが理由ではなかったはずだ。
いずれにしても、大きなターニングポイントを迎えたマルケス自身が語る22年の変化に大いに期待したい。なぜなら、最高峰クラスで7回タイトルを獲得したロッシ、史上最多のジャコモ・アゴスチーニの8回という記録を超えられるのは、僕はマルケスしかいないと思っているからだ。
そして最後に書き加えておきたいことがひとつ。それは、マレーシアとインドネシアテストでイチバンになれなかったマルク・マルケスだが、インドネシアで実践したロングランのアベレージは、誰よりも速かったという事実である。
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