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岩政大樹が語った「ライセンス制度への本音」と日本サッカー“指導者育成”の問題点「これをやれ、わかりました、では頭打ちに」 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2022/02/19 11:00

岩政大樹が語った「ライセンス制度への本音」と日本サッカー“指導者育成”の問題点「これをやれ、わかりました、では頭打ちに」<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

2017年、関東1部リーグの東京ユナイテッドFCで「選手兼コーチ」として指導にあたる岩政大樹

――今、欧州では選手以上に監督がシーンをけん引しているという印象があります。しかしJリーグの日本人監督では、戦術的なフィロソフィーを明確にしている指揮官は少ない。

 日本では、プロの指導者になる前に自分の戦術を確立する場所が少ないと感じています。本来ならプロへ行く前に自分のチームを持ち、試行錯誤しながら自分のサッカーに確信を持つことで、監督としてのスタイルができあがっていくはずなんです。それを見た強化担当者が「このサッカーを自分のチームでやらせてみたい」という流れにならないと、なかなかヨーロッパのようにはならないのかなと思いますね。

「監督と選手とでは頭の回し方が逆なんです」

――ドイツの指導者ライセンス制度では、ライセンスを取得後、そのカテゴリーで指導実績を積まないと次へ進めないというように、時間をかけた指導者育成が行われていますね。

 日本サッカー協会でもここ数年、上位のライセンスを取得するためには、指導経験を積むことを重要視しています。僕自身も現場で経験を積み、いろんなことにトライし、失敗しながら指導者としての成長を感じています。

――昨年11月に、指導者ライセンスの取得条件の一部緩和が発表されました。B級ライセンス取得時の成績が優秀であれば、日本代表20試合出場歴によって、A級取得に必要な「1年以上の指導実績」が免除されると。若い監督が少ないことへの危惧をJFAの反町康治技術委員長が語っていましたが、欧州で若手とされる30代の監督のほとんどは、選手としてのプロ経験がない、あるいは短い現役時代を終えて、指導者へと転身しているパターンです。

 これまで“指導経験重視”と言っていたのは、ヨーロッパの指導者ライセンスの制度が、実績重視でより厳しくなってきているという流れに、日本も合わせてきたからに他ならない。今回の緩和によって、「指導経験よりも代表戦20試合のほうが監督をやるうえで重要なんだ」というふうに捉えられかねないので、その点は危惧しています。

【次ページ】 「これをやれ」「わかりました」が多い指導現場

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