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岩政大樹が語った「ライセンス制度への本音」と日本サッカー“指導者育成”の問題点「これをやれ、わかりました、では頭打ちに」 

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寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2022/02/19 11:00

岩政大樹が語った「ライセンス制度への本音」と日本サッカー“指導者育成”の問題点「これをやれ、わかりました、では頭打ちに」<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

2017年、関東1部リーグの東京ユナイテッドFCで「選手兼コーチ」として指導にあたる岩政大樹

――それではいわゆる“指示待ち”の選手になってしまう。

 これはメキシコU-24代表コーチの西村亮太さんから聞いた話なんですが、メキシコの選手たちは練習メニューであっても「なぜこれが必要なんですか?」と疑問をぶつけてくるそうです。それに対して納得のいく説明ができないと、選手たちは動かない。だから、自然と指導者も鍛えられているんだと感じました。日本の場合は疑問を呈する選手もいないだろうし、「黙ってやればいい」と言ってやらせておける。これでは指導者も試されないし、整合性をつけて選手たちに戦術を伝える言語化能力も必要ない。「これをやれ!」「はい、わかりました!」というのは、ある種日本の文化だと思うんです。

――自分で考える余地があることを嫌う人もいるでしょうし。

 そうですね。指示されたことをやり切るほうが心地良いと感じる人もいるでしょう。これをダメだというわけじゃないけれど、ある一定のところで頭打ちになるのが、今の日本の立ち位置だと思う。そこまでの進歩はむしろ速いんですよ。高度経済成長期と同じで、ある程度のレベルまでは「はい、わかりました!」の文化のほうが速い。アジアのトップまですごい速さで来て、世界でもそれなりに戦えるところまで来たけれど、そこから先へ行けないというのが課題だと思うんですよね。このフェーズから今後どんなふうに日本サッカー全体が転換するんだろう、と考えると、難しさも感じます。

指導者・岩政大樹が「議論」を求める理由

――指導者育成はライセンスや評価体系の問題だけではなく、選手も含めた日本の社会性や文化も大きく影響していると。

 たとえば、ライセンス講習の現場はディスカッションに多くの時間を割きます。そのとき、誰かの指導実践に対して「良かったんじゃないですか?」とフワッとした感じで終わることも少なくない。でも「もっとこうすればいいんじゃないですか?」と意見を出し合って、改善できることにこそ議論の意味があるはずなんです。だから僕は、いつも「議論をしたい」という方針で行くんですよ。

――でも、また文化の話ですが、日本人はディベートが得意じゃないですよね。批判されたと捉えてしまう人も少なくない。

 議論して改善できれば、同じカリキュラムでも得られるものが変わってくるはずです。ヨーロッパでやっていることをただやっても、日本という文化を考えたら、同じ結果は得られない。戦術を分析して終わりではなく、指導者がケースバイケース、個々のパターンについて話しているとしたら、もっと原則的なものをチームへ落とし込めるような問いかけをする。ライセンス講習でそういった時間を重ねて、指導実績のなかで自分の指導スタイルを固め、確信を持てるまで昇華できるように手助けしてあげないといけないと思います。メキシコの例と同様にヨーロッパでは、指導者を鍛えてくれる環境があるけれど、日本はそういうわけじゃない。これは選手にとっても同じでしょう。

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