酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「野村克也さんの毛筆は立派」「清原和博さんは現役晩年…」サイン鑑定の第一人者が見た、達筆の野球人〈今の選手への要望も〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySankei Shimbun
posted2022/03/07 11:02
1998年、ヤクルトの野村克也監督にサインをもらう田淵幸一
サインの真贋を見分けるポイントは……?
――サインに「目が利く」小野さんですが、それでもサインの真贋を見分けるのは難しいのではないんですか?
「これは難しい。本当に真似されたらわからないですよね。僕らが気にするのは『出所』です。『いい筋』から出たものは間違いない。ついこのあいだも巨人軍の後援会の方のところに買い取りに行って、王さんとか長嶋さんなどの色紙が分厚い束で出てきましたが、そういうところでは偽物はないでしょう。
対照的に、たまにパパラッチ的な人が持ってくるのも見ます。『どこでもらったの?』と聞くと、『春季キャンプで選手からもらった』という感じですが、そういうサインは偽物でなくても、強引にもらってきているからサインが雑なんですね。忙しいから殴り書きになるし。そういうものは本物でも売りにくい。本当に、本人が書いたものでもそう見えないものを売ったりすると、うちの信用にもかかわるから、お断りすることもあります」
――最近の新入団選手は、入団早々にサインを書く練習をすると言います。でも小野さんにしてみれば、複雑な心境なのではないですか?
「そう、ちゃんと読めるように書いてほしいな、と思いますね。ネットなどで見ると名前を崩してサインにする方法を教える人もいるようですが(笑)。それから背番号は書くようにしてくれるといいですね。
基本的にサインをもらった人は飾りたいものなんです。『〇〇選手からもらったんだ』と自慢したいわけで。なのに『丸書いてちょん』みたいな状態だと、ありがたみがないし『誰のサイン?』と言われるようでは、意味がない。選手の皆さんも、そのことを考えてサインを書くようにしてほしいですね」
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