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「漫才の1分半はかなり大きい」あのキングオブコント王者はM-1をどう見た?「ネタ時間4分なのに」ハライチが1分半オーバーで物議の件は?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byM-1グランプリ事務局
posted2022/02/06 17:02
M-1ラストイヤーだったハライチ(結成15年)。敗者復活戦を見事に勝ち上がった
う大 1分半はかなり大きいですね。キングオブコントの場合、今は5分ですけど、僕らの頃は4分でした。4分と5分半ではまったく別物のコントがやれちゃう。ネタ選びから変わってくると思います。漫才はよくも悪くもお客さんの反応に影響されるところもあるので、まあ30秒くらい延びちゃうことはあるのかもしれませんけど、1分半はなぁ。漫才コンテストの場合は、それをよしとするんですかね。キングオブコントで同じことが起きたら、僕は釈然としないものが残るかもな。
――ハライチの次は、う大さんの評価がもともと高かった真空ジェシカでした。
う大 言葉のおもしろさは抜群でしたね。ただ、欲を言うと、もうちょっと漫才を壊しにいってやろうみたいな危険な感じがあってもよかったかな。彼らのネタも、漫才にしては、作られ過ぎてる感じがしないでもないというか。もう1つは、やっぱり演技力というか、お客さんに伝え切る力がもっと欲しい。錦鯉さんみたいに、このネタはこの人がやるのが世界一おもしろいって思わせる何かがないと。自分たちにしか似合わないキラーフレーズを見つけるとか。そういうインパクトのあるフレーズのあるなしが影響するのも、漫才とコントの違いのような気がします。コントの場合、ストーリーがあるので、途中であんまり濃い色を足しちゃうと、そこだけ浮いちゃって邪魔になることもあるけど、漫才だとツッコミで仕切り直せるので。
――う大さんは、たびたび「演技」ということをおっしゃいますよね。
う大 音楽にたとえるとわかりやすいけど、どんなにいい曲ができても、演奏者の技量がともなっていなかったら、曲の素晴らしさは伝わらないじゃないですか。コントと漫才も一緒だと思うんですよね。どんなにいいネタができても、演者にそれを伝える力が備わっていなかったら笑いは起きないと思います。だから、芸人の場合は、そこは両輪でしょうね。ネタをつくる力と、それを伝える力と。ただ、漫才の場合、伝える力というか、その人の個の強さだけで押し切ってしまう場合もありますけどね。それが通用するのも、漫才という芸の特殊なところだと思います。
――演技力という意味では、ラスト出番のももはどうでしたか。結成4年目のコンビで、出場者中、もっとも若い2人でした。
う大 今はまだ「演じている感」が強く出過ぎちゃってるかな。しかも、どっちも同じようなしゃべり方じゃないですか。もっと身の丈にあった、自然な話し方をそれぞれが見つけられたら、もっとウケるんじゃないですかね。
――かもめんたるは、今年もM-1には出るつもりなんですよね。
う大 M-1で決勝まで行ければ、その後も、テレビで漫才をやれるチャンスが出てくると思うんです。だけど、行けなかったら声がかかることはないだろうから、そしたら、もう漫才はやらなくなっちゃうかも。なので、今年はがんばろうと思います。ただ、僕らは、もうラストイヤーなんですよ。いきなりお尻に火が付いちゃった。もうちょっと早くから始めていたら、いろんなことが試せたのにな。そこはちょっと残念ですね。いろいろと偉そうなこと言っちゃったけど、漫才って難しいなぁ。いや、ほんとに難しいですよ。久々にやってみて、それがよくわかりましたね。
<#1、#2から続く>