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ジャンプ以上の服装規定!? 失格問題に「それほど驚かなかった」…射撃日本代表監督が語る“器具を使う競技”の宿命
posted2022/02/12 11:01
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
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AFLO
――現在ジャンプの失格問題が話題を集めています。田村さんはニュースを見て、率直にどのように思いましたか。
田村 うーん、射撃でも失格はよくある話なんですよね。だからそれほど驚かなかった。「あ、失格になってしまったんだな」と。
――射撃も銃や弾丸はもちろん、服装についても非常に細かいレギュレーションがあるんですよね。
田村 射撃用のコート、グローブといった服装や付属品それぞれに、サイズ、硬さ、形状などが細かく決められています。わかりやすいところでいえば、コートですね。射撃は、素材が硬いコートのほうが有利なんですよ。姿勢を固定しやすいので。だから、硬さを測る計測器で一定のおもりを押しつけたときに、3mm以上沈まなければならない、というルールがあります。注意が必要なのが、気温の低い日と湿度が高い日ですね。特に湿度が高いと、競技中にコートが汗を吸うことで意図せず硬くなってしまいます。その結果、検査でひっかかって失格になることもあります。
「まだコートは調整できるからいいんです」
――かなり厳しいルールに聞こえますが、射撃の世界では当たり前のことだと。
田村 まだコートは調整できるからいいんですよ。弾丸についてはコントロールできませんから(笑)。ルール上、ラピッドファイアピストル(射撃の競技種目の一つ)では、弾速が250m/秒以上の弾丸しか許されていません。だけど、弾丸が規定以上の速さかどうかは、撃つまでわからないじゃないですか。特に日本選手はすべて海外から輸入する必要があり、何らかのミスで古い弾丸が混じっていることもある。古くて保存状態が悪い弾丸はスピードが落ちるんです。本番では、仮にそういった事情があったとしても、250m/秒を下回れば失格です。いい弾丸を選ぶことも技術に含まれる、と。実際にワールドカップであった事例です。