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“三役在位28場所目”御嶽海は照ノ富士の一強時代を止められるのか…13勝で大関昇進の目安達成も基準は「全勝優勝」?
posted2022/01/18 11:00
text by
荒井太郎Taro Arai
photograph by
KYODO
昨年は4度の優勝を果たし、横綱白鵬が去った土俵で入れ替わるように第一人者に君臨した横綱照ノ富士が、新横綱から3連覇という栃木山以来、103年ぶりの大偉業に挑む令和4年初場所も、当然ながら優勝の大本命と見られていた。
先場所は相手の攻めを受け切って勝つという、まさに横綱相撲を15日間取り切り、6度目の優勝を自身初の全勝で成し遂げた。「体を正面にぶつけて、受け止めてやっていく」という盤石な取り口に死角らしい死角は見当たらず、大関陣以下、他の力士との力量差は益々、広がる一方の様相を呈し、「2桁の優勝」を目標に掲げる今年は本格的な一強時代到来を予感させた。
今場所は初日の小結大栄翔戦や4日目の宇良戦など、攻め込まれる場面も少なくなかったが、序盤5日間は無傷で乗り切って無難な立ち上がりを見せた。5日目を終わって勝ちっぱなしは横綱照ノ富士、関脇御嶽海、平幕の阿炎の3人となり、今場所も一人横綱が優勝戦線をけん引すると思われた。しかし、6日目の結びに波乱が起きる。
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立ち合いで玉鷲の突き放しに後退した照ノ富士は、さらに相手の左のど輪、右おっつけの猛攻にたちまち右足が俵にかかる窮地に陥った。顎が上がりながらも左足を前に出し、37歳のベテランの突きを下からあてがって反撃に移行しようとするが、その反動も利用した幕内最年長力士の右からの突き落としにたまらず土俵を這った。
痛恨の黒星で秋場所13日目から続いていた連勝も23でストップしたが、翌7日目は冷静な相撲ぶりで遠藤を寄り切って前日の負けを引きずることはなかった。初場所は前半戦が終わり、阿炎は7日目から連敗を喫し、照ノ富士も1敗で後塵を拝すことになり、御嶽海がただ1人全勝ターンで後半戦を迎えるという展開になった。
三役在位は28場所目も「大関」が遠い御嶽海
先場所は関脇で11勝をマークし、2場所連続2桁勝ち星を狙う今場所は、御嶽海にとって大関取りの足場固めとなる場所だ。三役は今場所が連続10場所目。通算でも在位28場所目となり、優勝はすでに2回と実力的にはとっくに大関に上がっていてもおかしくない。それなのに三役での10勝以上がこれまで2場所と続かないのが不思議だ。
最大の要因は気持ちだと言われている。白星を大きく先行させても格下相手にあっさり土俵を割る負けが、これまでは少なくなかった。そこからはまるで気が抜けたかのようにズルズルと連敗を喫するのがいつものパターンでもあった。先場所も若隆景や宝富士に喫した黒星がまさにそんな相撲だったが、翌日はきっちりと白星を挙げ、悪い方向にいきそうな流れをキッパリ断ち切ったのが、今までとは違うところだ。