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“三役在位28場所目”御嶽海は照ノ富士の一強時代を止められるのか…13勝で大関昇進の目安達成も基準は「全勝優勝」?
text by
荒井太郎Taro Arai
photograph byKYODO
posted2022/01/18 11:00
大相撲初場所8日目、関脇御嶽海(右)は大栄翔の強烈なのど輪をこらえて押し返し、3年半ぶりのストレート給金を決めた
年末の12月25日に29歳となり「上を狙える三役は30歳までかなと思う」と今年が20代最後の年となる男にも、微妙に意識の変化が訪れたか。今場所は土俵上の態度からもピンと張りつめた雰囲気が常に漂い、表情も一段と引き締まった印象を受ける。
初日からきれいに白星を並べ立てた相撲内容からも厳しさが窺える。給金を直した大栄翔戦は強烈なのど輪で土俵際まで押し込まれたが安易に引くことなく、しつこく下からあてがって逆に大栄翔が引いたところを一気呵成に押し出した。全勝での勝ち越しは初優勝した平成30年名古屋場所以来となる。
「我慢、我慢で。どこかで勝機を見つけて攻めるしかない」
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最後までこの緊張感が持続できるかどうかが、3度目の賜盃、ひいては大関取りの大きなポイントとなりそうだ。
優勝なら場所後の大関昇進も?
昨今は大関昇進の目安として「三役で3場所33勝以上」などと言われている。昨年秋場所が9勝、先場所は11勝の29歳の関脇は、今場所で13勝以上すれば“ノルマ達成”となるが、数字以上に相撲内容が大事であることは言うまでもない。そもそも番付上の格上は一人横綱の照ノ富士と貴景勝、正代の両大関の3人しかいない。貴景勝は途中休場して対戦がなくなり、正代も勝ち越すのに汲々としている。場所前、伊勢ケ浜審判部長(元横綱旭富士)が場所後の大関取りについて「全勝優勝すれば、そういった話も出てくるんじゃないか」という見解を示したが、現状に鑑みれば当然だろう。
あくまでも今場所は大関取りの足場固めという位置づけだが、高いレベルでみたび賜盃を抱き、「一強時代」に待ったをかけることになれば、昇進ムードも一気に醸成される可能性はなきにしもあらずだ。
来場所は貴景勝がカド番となり、前半を五分の星で折り返した正代も先行きが危ういと言わざるを得ない。そんな状況も優勝争いの先頭を走る実力者にとっては追い風となりそうだ。期待を裏切り続けてきた男が一転、手薄な上位陣の救世主になるかもしれない。
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