箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
シード落ちの早稲田、沿道からは「そんなところ走ってんなよ!」…箱根駅伝至上主義に隠された“2つの偉業”とは?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2022/01/17 17:25
優勝回数では最多の中央大学に次いで2位の13回を誇る早稲田大学。しかし、今年の箱根駅伝では3年ぶりにシード権を逃した
中谷と太田直希(4年)は2020年12月の日本選手権で、そろって27分台に突入。そして、今年度を迎えてすぐの2021年4月に井川龍人(3年)も27分台ランナーの仲間入りを果たした。
シューズ等ギアの性能の向上があったにしても、日本人の大学生が27分台で走ったのは、歴代でもわずか20人しかいない。その27分台ランナーが、同時期に同じ大学のチームに3人も在籍しているのは、大学駅伝史上初めてのことだった。
「確かに初めてのことかもしれませんが、秋になったら、27分台を5人ぐらい抱えるチームが出てくるんじゃないかなと思っています」
春先、相楽豊駅伝監督は冷静に現状をとらえ、こんなことを言っていたが、結局、秋になっても27分台ランナーの数で早稲田に並ぶチームは現れなかった。
もちろんタイムだけ良くても、その力を目標レースで発揮できなければ意味がないという意見があるのも重々承知だ。それでも、早大が史上初めてのことをやってのけた事実に変わりはない。
早大の凄さ・2)日本選手権に最多10人を送り出している
もう1つ、特筆すべきは、トラックの日本最高峰の舞台である日本選手権に中長距離種目で出場実績のある選手が多いことだ。
今年度は、10000mに井川、1500mに石塚陽士(1年)、5000mに千明龍之佑(4年)、伊藤大志(1年)、3000m障害に菖蒲敦司(2年)、諸冨湧(2年)と6人が、日本一を決める舞台に立った。そして、千明は8位入賞と健闘を見せている。
過去に遡ると現役選手では、2020年は、10000mに中谷と太田、5000mに小指卓也(現3年)が出場。2018年は1500mに半澤黎斗(現4年)が出場している。
今季在籍している選手だけで、なんと10人にも上る。これは、駅伝だけでなく、個を重視する早大ならではの成果と言っていい。箱根の結果には直結しなくても、十分に評価に値する実績だろう。
学生にとって「日本選手権出場」が難しい理由
日本選手権に出場するには、参加標準記録を有効期間内にクリアしなければならない。さらに、2021年からは各種目に出場枠の目安が設けられている(「ターゲットナンバー制」という)。そのスタートラインに立つことでさえ、なかなかハードルが高いことなのだ。特に、長距離種目は、実業団で競技を続けている選手も多いため、大学生が出場するのは決して簡単なことではない。
ちなみに、今年度の日本選手権の出場人数で、早大に次いで多かったのは、明治大、東海大、立教大で、3人ずつだった。