箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
シード落ちの早稲田、沿道からは「そんなところ走ってんなよ!」…箱根駅伝至上主義に隠された“2つの偉業”とは?
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byNanae Suzuki
posted2022/01/17 17:25
優勝回数では最多の中央大学に次いで2位の13回を誇る早稲田大学。しかし、今年の箱根駅伝では3年ぶりにシード権を逃した
早稲田は、2017年のように長距離ブロックから日本選手権出場者を輩出できなかった年もあった。改めて個の育成に力を注いできたことが、成果となって現れた。
ポイント練習(負荷の高い重要な練習)の日に所沢のグラウンドを訪れると、選手たちはいくつものグループに分かれて、それぞれのメニューをこなしている。ストップウォッチを何個も手にして、タイムを読み上げるマネジャーには大変な労働になるが、それほど個を重視して指導に当たっていることの現れでもある。
トラックと駅伝とは別物
今季のトラックシーズンは、日本選手権だけでなく、前半戦の大きな目標である関東インカレでも早大勢の活躍は目立った。1500m、5000m、10000m、3000m障害、ハーフマラソンの中長距離5種目全てで入賞者を出し、そのうち、3種目は複数入賞だったのだ。
「うちは、トラックはトラックでしっかり結果を残し、シーズン後半は駅伝っていう感じに切り替えてやっていくチームです」
中谷は、早大というチームの特徴についてこう説明する。
長距離部員数30人前後と少数ながら、それを補える戦力を有していた。それなのに、駅伝で苦戦したのは、やはりトラックと駅伝とは別物ということだ。また、中谷の言う“切り替え”の部分、つまりトラックから駅伝へのシフトチェンジがうまくいかなかったからだろう。
出雲は、全員が日本選手権経験者というオーダーだったが、仙骨を疲労骨折した千明を欠いたのは痛手だった。全日本でも引き続き千明は欠場、加えて太田も左膝に不安を抱え欠場した。そして、全日本の後には菖蒲が大腿骨を疲労骨折し、箱根に間に合わなかった。
選手の足並みがなかなか揃わず、出雲、全日本、箱根と、ベストメンバーを組むことができなかったことは、大きな課題として残った。
大学陸上界の評価軸は決して1つだけではない
それでも、箱根至上主義的な風潮の一端をそれを報道する立場にある我々が担っていることは自覚しているが、少し視点を変えて、早稲田というチームを見てみてもいいのではないだろうか。
“点”で見れば――つまり、箱根の結果だけを見れば「今年の早稲田は弱かった」という烙印を押されても仕方ないかもしれない。だが、1年間を通してみれば、決して「弱かった」と言い切れない実績を残してきたのも事実なのだ。評価軸は決して1つだけではないはずだ。