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31歳の“最初で最後の箱根駅伝”は区間20位…それでも今井隆生がレース後に語った2年間の全て「運と縁が重なった奇跡だった」
posted2022/01/07 17:45
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
Sankei Shimbun
区間20位。見せ場はあまりなかった。それでも、多くの箱根ファンを惹きつける走りだったことは間違いない。記憶に残るレースだった。
初出場の駿河台大で4区を任された今井隆生(4年)、31歳。心理学を学ぶため、中学校の体育教員を“2年間限定”で休職し、恩師の徳本一善監督とともに箱根路を駆け抜けた。
残り1キロ。徳本監督が今井に叫んだ「ありがとな!」
小田原中継所まで残り1キロ。後ろを走る運営管理車から徳本監督の檄が飛んだのは、その頃だった。
「ありがとな。この2年間、俺は本当に楽しかった。だからここに何も置いて帰るな。お前から粘りとったらなんも残らないからな。ダントツの20位らしく死ぬ気で粘り倒せ!」
最初で最後の箱根路は、苦しい旅路となった。4区の今井にタスキが渡った時点で18位。しかし、後続の中央学院大、専修大に先を行かれ、最後尾に。湘南の細かいアップダウンに足を削られていった。蓋を開けてみれば、19位に2分21秒も開けられたダントツの区間20位だった。
「記録にも記憶にも残る走りをしたい」。そう意気込んでいた今井にとって、不本意なラストランだったのではないか。中継所での号泣は悔し涙か……。色々考えつつも小田原中継所で今井に話しかけると、意外にも本人はスッキリとした、肩の荷が降りたような表情を浮かべていた。
「徳本さんから『ダントツの区間20位だぞ』とは言われていたので。やっぱり区間20位じゃないかという厳しい意見もあって当然だと思います。でも正直、今の自分には精一杯の走りでした。やりきったという思いはあるので、胸を張って次のステージで頑張っていきます」
話題となった「師弟リレー」を告げられたのは10日前
今井は山登りの5区を任される公算が大きかった。しかし、12月17日にあった選考会で、中学教師時代の教え子の永井竜二(3年)が十数秒速く先着。今井は復路での起用が濃厚となっていた。話題となった「師弟リレー」が徳本監督から伝えられたのは、本番10日ほど前だったという。