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“高校6冠”経験者・中根聡太監督(25歳)が挑む2度目の春高「指導者って難しいけど、面白いし、幸せですよ」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2022/01/04 06:00
昨年の春高で監督デビューした中根聡太(25歳)。高校時代は石川祐希とともに“6冠”を達成した
セッターの中根がトスを上げ、エースで主将の石川祐希が決める。自身の高校時代は2年、3年といずれも春高、インターハイ、国体を制して「高校6冠」という偉業を達成した。選手時代は「負けられない」というプレッシャーが心を鍛えてきた。
そう振り返りながら、指導者となった今も変わらず星城が重んじる“自主性”の意義を説く。
「この立場になって改めて思うのは、高校の3年間は本当にあっという間だな、と。でもだからこそ、その先の人生も見続けてあげたい。そのためには単純に高校で勝つことだけを考えたら、コマとしてコントロールしたほうがいいのかもしれないけれど、それは違う気もするし、勝つことだけがすべてじゃない。バレーボールで豊かになる道を進む選手もいれば、高校が集大成という選手もいる。どちらもこれからどう生きていくか、そのための力をつける時期が高校時代だと思うんです」
とはいえ、それは言葉にするほど易しいことではない。将来を見据え、上のカテゴリーでの活躍、世界をも視野に入れるような選手を育てながら、「勝ちたい」という願いにどう応えていくのか。
1月5日から始まる春高バレーの出場校の中で、星城は187.7センチと最も平均身長が高い。中根は今まさに、「大型選手をいかに育てるか」という課題に直面していた。
「現役を引退する時、自分のような小さいセッターがいつまでも試合に出ているようじゃダメだな、と思ったんです。もちろん選手である以上、試合に出たいしそのために努力する。だけど日本の将来は、と考えたらやっぱり大型選手を育てないといけない。そのためには試合へ出し続けなければならないけれど、当然勝つためには相手も狙ってくる。そこでモチベーションを切らすことなくいかに前向きに取り組ませることができるか。指導者になって、改めて大きな選手を育てる意味と、難しさを実感しています」
上のカテゴリーに進んでも勝負できるように
竹内総監督は星城高校を率いる傍ら、U18日本代表のコーチも務めている。高校というカテゴリーのみならず、世界と対峙する経験から「大きな選手も積極的に試合へ出し続けなければならない」と自ら実践してきたのを、中根も間近で見てきた。
幼少期から体格に恵まれる高身長の選手の多くが「拾わなくてもいいから打て」とばかりに守備は免除されることも少なくない。だがそれでは、狭い世界では通用しても一段階、二段階とステージが上がれば通用しない時が来る。
上のカテゴリーに進んでも勝負できる選手になるために、高校時代から大型選手も攻撃だけでなくレシーブもする。その意識づけを徹底するだけでもまだまだ難しい、と中根は苦笑いを浮かべる。
「フライングレシーブでボールを追う。これって当たり前のことですが、190センチ台の選手は子どもの頃にやってきていないから、実は怖い。だから追いかけずに見送ってしまうこともあるんです。
そこを払拭させるためには、日頃からレシーブ練習でボールを追いかけるのは当たり前、飛び込むのも当たり前。もちろん試合も同じ、と段階を踏んで行かないといけない。でも決して守備力に長けているわけではないから、うまくいかないこともあるし、失敗すれば嫌になる。そのコントロールをどうするか、というのがすごく難しい。まだ自分は理解できていないな、と思い知らされることばっかりですよ」