バレーボールPRESSBACK NUMBER
“高校6冠”経験者・中根聡太監督(25歳)が挑む2度目の春高「指導者って難しいけど、面白いし、幸せですよ」
posted2022/01/04 06:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Sankei Shimbun
クリスマスイブの体育館。4日後に始まる校内合宿へ向け、次々運び込まれるストーブを「ここに並べて下さい」と手際よく仕切る。
「教員って、やることがいっぱいありますね」
母校・星城高の監督となり2年目。選手時代の面影を残しながらも、中根聡太(25歳)はすっかり“先生”になっていた。
「選手の頃は、自分なりにやってきた経験則とか、これかな、という答えがあったので“こうだ”と断言することができたんです。でも指導者になってからはまだ全然。答えが見つかるようなレベルには達していないので、なかなか言い切れない。難しいですね」
ジェイテクトSTINGSのセッターとして2019/20シーズンのVリーグを初制覇し、直後に現役引退。コーチとして指導者人生をスタートした中根の監督デビューは2021年の春高本番だった。
「最初は(愛知の春高)予選から監督をやらないか、と竹内(裕幸)先生に言われたんですけど、さすがにそれは無理です、と。選手からすればすべてを懸けて臨む場なのに、公式戦で一度も監督をしたことがない人間が、何もできるわけがない。今だって、まだまだ何もわかっていないですから」
予選決勝、愛工大名電との激闘
選手の頃はあれほど勝ち続けた春高も、指導者として臨む今、思い知らされるのは勝つことの難しさと己の未熟さ。監督として初めて出場権を得た11月の愛知県大会決勝・愛工大名電との試合も、まさにそんな苦さと喜びを味わう、忘れられない試合になった。
開始早々、浜崎真之介(3年)のジャンプサーブが立て続けにサービスエースを奪うなど、波に乗った星城が第1セットを先取。しかし第2セットをジュースの末、25対27で失うと、第3セットは14対25と大差をつけられてセットを連取された。
夏のインターハイには愛知代表として出場できたとはいえ、ここで負ければ終わり。絶体絶命の状態で、チームを蘇らせたのは3年生たちだった。
「チームの中心は2年生。僕は春高(予選)も点を取る2年生がどれだけ頑張れるか、そのために3年生がどれだけサポートできるかがカギだと思っていたんです。でも実際は違った。追い込まれた状況でセッターの田中(応亮/3年)は『やってやろうぜ』と周りに声をかけ、キャプテンの安達(希音/3年)は『俺たちが頑張るから、俺たちについて来い』と。ここでこんなエネルギーが出せるのか、こんなプレーができたのか、と思うような姿を見せつけられました」