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シャビの下でバルサは失われた「クライフ哲学」を取り戻せるか? 「ウイングの再興」こそが復活のキーワードに
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2021/12/30 17:04
7位で2021年を終えたバルサ。再建を託されたシャビは、かつてのスタイルを取り戻すために注力するが……
リネカーやストイチコフもウイングで起用
ただし、その全員が純正のウイングだったわけではない。
例えば、クライフはリネカーやストイチコフ、ハジなどを、グアルディオラはエトー、アンリ、イニエスタ、ビジャといった選手もサイドに立たせている。
ファンハール体制下のリバウド、ライカールト期のロナウジーニョも同様だ。
偽ウイング――すなわち、戦術的要件を満たしつつ選手の長所を最大限に活かす手段。これもまた「バルサのウイング」の特長である。
9番が本来のポジションだったリネカーやストイチコフを、ウイングで起用した理由についてクライフはこう語っている。
「2人ともスピードがある。スピードがある選手は、それを活かすためのスペースを必要とする。しかし、我々はたいてい敵陣内に攻め込んでいるので、センターフォワードの位置からゴールまでは距離が短い。故に、彼らは本職のウイングではないにもかかわらず、ウイングとしてプレーしたのだ」
技術的にずば抜けた選手も、偽ウイングに適している。片側でパスを素早く回して相手を引き寄せ、守備が手薄になった逆サイドを突くのがポジショナルプレーの定石だからだ。そこにいるのがリバウドやロナウジーニョやイニエスタなら、決定的なゴールチャンスが生まれやすくなる。
ガビには偽ウイングを命じる
ところで、ウイングにせよ偽ウイングにせよ、バルサのサイドを担ううえで最も重要なことは何か。
「バルサ史上最高のウイング」に挙げられることもあるペドロの特長が、そのまま答えになるだろう。彼の特長を評するのは、ピミエンタだ。
「技術面は無論、戦術面が素晴らしかった。ウイング一筋だったからということもあるが、どういうときに中へ入り、どういうときにスペースへ飛び出すべきか、いつ味方との距離を詰め、いつ開くべきか、完璧に把握していた」
カンテラを含めてバルサで24年もの歳月を過ごし、そのサッカーの神髄を知るシャビは、監督となったいま、しばらく失われていたバルサのウイングの再興に注力している。
Bチームのジュグラとイリアスをデビューさせて、アランダをトップチームの練習に呼び、アブデに継続的に出番を与え、ガビには偽ウイングを命じている。
その一方でデンベレはシャビの要求を理解しつつあるようだし、ケガで長らく欠場していたアンス・ファティは、まもなく戻ってくる。
18試合を終えて7位と精彩を欠くバルサの後半戦の巻き返しは、両サイドの2人がカギを握るだろう。