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シャビ新監督はバルセロナの救世主になれるか? 4部からスタートしたグアルディオラとは対照的…「重圧は比較にならないほど大きい」
posted2021/11/28 11:00
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Mutsu Kawamori
平日の昼間に1万人のファンが集まったカンプノウでのシャビのバルサ監督就任イベントを見て、4部リーグにいた頃のペップ・グアルディオラの姿を思い出した。
グアルディオラは'07年6月にバルサBの監督に就任した。現役を引退して1年もたっておらず、まだ36歳。地元での人気は高かったが今回のような騒ぎにはならず、カンプノウに人を集めるイベントもなかった。当時の会長ラポルタやSDベギリスタインと会見に臨んだくらいだ。その時の言葉が印象に残っている。
「監督としてはまったくゼロからのスタートだ。どこからも、まったくオファーがなかった。電話の1本すら。クラブには感謝している」
4部に降格したばかりのバルサBだったが、実績のない若者にはそれくらいしかオファーがなかった。「グアルディオラは無給でもやるつもりだった」と後にラポルタは明かしている。過去にバルサ監督就任の話を2度、ブラジル代表の話も断った現在のシャビとは対照的だ。
シャビの重圧はグアルディオラとは比較にならない
4部という舞台は監督にとっても過酷なものだ。トップレベルでやっていたグアルディオラのような選手にとって、自らの理想をピッチに描く苦労は計り知れない。率いた最初の親善試合では90分間ベンチに座ることなく立ちっぱなしで指示をし、終了間際にようやく1点とって勝ったくらいだ。そんな中で3部昇格を果たした彼は、直後にトップチームの監督に抜擢され、やがてサッカー界の階段を駆け上がっていった。
その姿を現在のシャビと比較するのは自然だろう。クラブのレジェンドで、中盤の頭脳。シャビも41歳とまだ若い。しかし重圧は比較にならないほど大きく、ポスト・メッシのチームを引き継ぐ困難もあり、シャビの挑戦は何倍も難しいものになる。
お披露目のスタンドには、クラブが準備した旗を手にシャビ・コールを送るファンの姿があった。まるで優勝でもしたかのような騒ぎ。メディアも「シャビ・スーパースター」(ムンド・デポルティボ紙)、「歴史」(スポルト紙)とハードルを上げる。
シャビがなんとかしてくれる――そんな淡い期待に不安を感じる。沈みゆくバルサの救世主として迎えられたかつての愛弟子を、14年後のグアルディオラは遠くマンチェスターからどんな思いで見ただろうか。