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日本だけ“投手が打つガラパゴス化”? MLB両リーグで「DH制」濃厚… セ・リーグも議論すべきでは《三振率44.2%》
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/12/24 17:06
昨年の理事会で2021年に暫定的に指名打者制度を導入することを提案した巨人・山口寿一オーナー(左)
クロマティ「引き分けなんてママとダンスを踊るようなもの」
実際に試合が行われていたほっともっとフィールド神戸では試合途中で最終電車の告知が行われるなど、試合がいつ終わるかとヤキモキするファンの姿があった。この終わり時間の見えない戦いが野球というスポーツの醍醐味ではある。ただその一方で、近年ではスピードアップが叫ばれるように、プロ野球の最大の課題がこの試合時間の長さでもあるのだ。
「野球は試合時間が長過ぎて退屈」……そうした声と共に野球離れが進む中で、NPBはコロナ対策で、とにかく時間短縮だけを目指して9回打ち切りという最悪の選択をしてしまった。
「引き分けなんてママとダンスを踊るようなものだ」と退屈な日本の引き分け制度を揶揄していたのは、元巨人のウォーレン・クロマティさんだった。
9回打ち切り制度の結果が、これまでの最多だったシーズン74試合を大きく上回る102試合の「ママとのダンス」と、その大量の引き分けが生み出した格差による不公平感だった。例えばせめて1イニングだけでも延ばして10回にタイブレークを導入してみれば……引き分け数はかなり減って、ファンも白黒の決着を見届けて「大好きなパートナーとダンスを踊ったように」満足して球場を後にできたはずである。
もしあの日本シリーズでも延長戦でタイブレークを導入していれば、それもまたスリリングな戦いとなって決してあの熱戦の価値が下がるものでもなく、試合時間の短縮にも繋がっていたはずなのである。
セ・リーグへの指名打者制度の導入はもちろんだが、メジャーでは正式に導入されていないタイブレーク制度の導入も、今後の野球の発展のためには検討してみてもいい課題のはずである。伝統という言葉に安住するのではなく、スリリングでエンターテイメント性の高い競技になることが、プロ野球の発展には不可欠のはずだ。
それには、いまの野球界、特にセ・リーグはあまりに変化することに消極的すぎるのではないだろうか。
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