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日本だけ“投手が打つガラパゴス化”? MLB両リーグで「DH制」濃厚… セ・リーグも議論すべきでは《三振率44.2%》
posted2021/12/24 17:06
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Sankei Shimbun
ヤクルトが日本一に輝き、2年ぶりに開催されたセ・パ交流戦ではセ・リーグが49勝48敗11引き分けと12年ぶりに勝ち越した。
2021年のプロ野球は久々にセ・リーグのシーズンだったと言える。その“セ高パ低”の結果が影響しているのかもしれないが、ここ数年、毎年オフシーズンに論争となってきたセ・リーグへの指名打者制度(DH制度)導入の声が、今年はまったく鳴りを潜めて聞こえてこない。
昨年12月14日に行われた理事会では、巨人が山口寿一オーナー名で文書を提出。コロナ禍の中での投手の負担軽減、チーム強化とプロスポーツとしての真剣勝負の徹底という3つの理由を柱に、2021年シーズンに暫定的に指名打者制度を導入することを提案した。しかし他の5球団は故障者数と指名打者制度の因果関係への疑問などを挙げながら、反対を表明。結果的には巨人の案は全く相手にされずに却下となってしまっている。
しかも指名打者制度導入論のもう1つの大きな柱だった“リーグ間格差”の問題も、冒頭に述べた“セ高パ低”というシーズンの結果から、あまり大きな問題として注目を集めることがなくなった。
その結果が、今年のこの静かなオフなのである。
ナ・リーグでも指名打者制度導入が不可避の状況
しかしこうしてセ・リーグが改革に消極的な間にも、世界の野球界は大きく動こうとしていることを見逃してはならないだろう。
というのも米大リーグがいよいよ「ユニバーサルDH」へと動き出している。その結果、これまで投手が打席に立っていたナ・リーグでも指名打者制度導入の可能性が高まってきているのである。
現在は労使交渉の決裂から経営サイドがロックアウトを敢行中で、大リーグの公的動きはすべてストップしている。しかし、いずれこのロックアウトが解除されれば、懸案だったナ・リーグへの指名打者制度の導入問題も動き出し、早ければ22年シーズンから、それがムリとしても、ごく近い将来に導入されることは不可避の状況となっているのだ。