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有馬記念の“二強”にはまったく同じ「大きな不安」が? 一方「この秋最高の状態」と絶賛の穴馬とは
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byPhotostud
posted2021/12/25 11:03
(左)今年の宝塚記念を制したクロノジェネシス(右)天皇賞・秋の完勝で勢いに乗るエフフォーリア
前走の凱旋門賞は、道悪巧者のこの馬にとってもタフすぎるほど馬場が重く、力を出し切れず7着。それでも、ラスト200mを切るまでは「ひょっとしたら」と思わせる見せ場をつくり、コンマ9秒しか負けなかった。
引退レースとなるここで、史上初のグランプリ4連覇の偉業を達成するか、注目されている。
「二強」には同じ“大きな不安”が?
ここはエフフォーリアとクロノジェネシスの「二強」で決まり――と言いたいところだが、そう断言できない材料もある。
追い切り後の両陣営のトーンが、どうも上がり切らないのだ。
1週前と今週水曜日、エフフォーリアの追い切りに跨った横山武史は、「天皇賞・秋に比べると若干落ちるかなという気がする」と言い、クロノジェネシスの動きを見た斉藤調教師は「一番いいときと比べると物足りない」とコメントしている。
横山は、「それでも8割、9割の出来にはあるので、あまり気にしていない」と加えたが、10割でないことは確かなようだ。
しかし、もともと有馬記念というのは、当初からここを最大目標にする馬はあまりいないレースだ。天皇賞・秋やジャパンカップ、牝馬ならエリザベス女王杯などに向けて状態を上げていき、戦い終えてもまだ余力のある馬同士の争いになる。そう私に言ったのは、マツリダゴッホで2007年の有馬記念を制した国枝栄調教師だった。関西馬の優勢がつづくなか、有馬記念では関東馬が好走するのはなぜか、という話から出てきたコメントだった。マツリダゴッホが勝った07年を含めたそこまでの10年で、関東馬が7勝もしていたのだ。
その後はまた関西馬の優勢がつづいているが、それでも、ローテーションも、レース自体も厳しい消耗戦となる有馬記念では、輸送距離の短い関東馬にアドバンテージがあることは間違いない。
話が逸れたが、要は、暮れにピークを持ってくることはきわめて難しく、有馬記念に出てくる馬が「この秋最高の状態」ということはほとんどない、と考えるべきなのだ。
であるから、横山や斉藤師が「物足りない」とコメントしていても、他馬も同じなので、相対的には大きな問題としてとらえる必要はないと言える。