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格闘技PRESSBACK NUMBER
「ユートピアみたいな世界」現役慶應大生の“女子レスラー”無村架純が語る学生プロレスの価値《特別フォトインタビュー》
text by
門間雄介Yusuke Monma
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/12/27 11:03
慶應大法学部に在籍し、司法試験合格を目指して勉強に励む傍ら、学生プロレスの選手としても活動している無村架純
男女のミックスドマッチに抵抗感はないのか?
他の学生プロレス団体にも女子選手はちらほらいる。だが人数が圧倒的に少ないので、たいていの場合、女子選手は男子選手と闘うしかない。
男子選手の立場から見れば、女子とは体格差が明確なため、その差を利用して試合展開を作りやすいという側面がある。一方の女子選手から見たとき、しかもプロのレスラーではない学生という立場で、フィジカルな接触をともなう男女のミックスドマッチに抵抗感はないのか。「私はないなあ」と彼女は言う。
「団体内だと性別の垣根を超えて仲がいいので、もう女として見られてないし、男としても見てないし。OBの人から『団体内恋愛はないの?』ってよくちゃかされるんですけど、本当にないです。だって練習後の食事とかで、まわりは風俗や下ネタの話ばかりしてるんですよ。そうしたら恋愛対象として見なくなるじゃないですか(笑)。学生プロレス的に言ったら、例えば展開にセクハラを入れるとヒールがヒールらしく見える面はあると思いますけど」
「学生プロレスは“オアシス”」
学生プロレスの特色である下ネタや著名人の名前のもじりは、コンプライアンスが厳格化する社会で、本来なら許されないものになりつつある。しかし時代の変化から取り残されたかのように、学生プロレスの世界ではいまなおその価値観が無邪気に生きつづけている。
「冷静に考えたら、これが文化だと言っても一般の人には理解できないところがありますよね。その中にいると麻痺しちゃうんですけど、学生プロレスを知らないまわりの人が見たらどう思うんだろう。後輩は親や友だちに身バレした、最悪、みたいなことを言ってたし(笑)、たしかに違う世界ですよね」
彼女はそれでも、いや、それだからこそ学生プロレスの魅力はもっと多くの人に伝わるはずだと感じている。
「世間的には確かに厳しくなってるのかもしれないですけど、この楽しさをわかってくれる人はまだまだいると思ってるので。例えばテレビだって、コンプラの厳しくない時代の番組を見て、いまの人たちも面白いって言う気がするんです。それと同じようにコンプラに息苦しさを感じてる人たちが、学生プロレスを見たときに面白いと思ってくれるんじゃないかなって。厳しい世間の中で、逆にオアシスみたいになるというか。まだ見つかってないだけで、発見されたら面白いと思うんですよ。ツイッターの公式アカウントに、『なにこのリングネーム』みたいな引用ツイートがたまにくるので。だからもっと広めていかないとなって思います」