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慶應プロレス研究会“唯一の女子学生レスラー”無村架純が“男子相手”に闘う理由「木村花さんみたいに」《特別フォトインタビュー》

posted2021/12/27 11:02

 
慶應プロレス研究会“唯一の女子学生レスラー”無村架純が“男子相手”に闘う理由「木村花さんみたいに」《特別フォトインタビュー》<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

慶應プロレス研究会に所属し、“唯一の女子レスラー”として活動する無村架純

text by

門間雄介

門間雄介Yusuke Monma

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

UWF(関東学生プロレス連盟)を筆頭に、日本には複数の学生プロレス団体が存在する。その多くが“大学サークル”として活動を行っているが、在籍する選手のほとんどは男子学生というのが実情だ。そんななか、慶應プロレス研究会(KWA)で“唯一の女子レスラー”として活躍する選手がいる。名前は無村架純。彼女はなぜ学生プロレスの世界にのめり込むことになったのか――(全2回の1回目/後編へ続く)。 

2021年11月、慶應義塾大学三田キャンパス。

 昨年は新型コロナウイルスの広がりからオンラインで開催された三田祭が、2年ぶりに対面形式で行われた。

 とはいえ来場者数は感染防止を目的に制限され、原則として在校生と参加団体の卒業生しか入場できないため、約20万人が会期中に詰めかけた以前のにぎわいは見られない。

 物寂しさが漂うキャンパスを奥へ奥へ進んでいく。すると向こうから奇妙な叫びが聞こえてくる。国の重要文化財に指定されている、慶應大学を象徴する建物のひとつ、図書館旧館の辺りだ。

「主よー!」

 それはブルマ姿のクリスチャン学生レスラー、高輪ハードゲイが敵側の差しだす踏み絵を前に身もだえる声だった。

慶應大の学生だけが在籍できるプロレス研究会

 赤煉瓦造りの由緒ある建造物の前に、いかにも不釣り合いなかたちで設置されたリングの上では、慶應プロレス研究会(KWA)の面々が最高に馬鹿馬鹿しく、ときおり真剣な闘いをくり広げていた。

 KWAは学生プロレスを行なう大学公認の団体として1979年から活動している。在籍できるのは慶應大学の学生のみ。一時期はプロレス人気の凋落にともない、会員数が2名まで減少したが、現在では総勢15名と活気を取り戻している。各地の学生プロレス団体が感染拡大の余波で思うように活動できず、新人の勧誘に苦戦していると言われる状況とは対照的だ。

「彼女の加入が影響していると思います」

 KWAはコロナ禍に応じ、新勧活動をもっぱらツイッターを通じて行っているが、ある女子選手の話題を取り上げるようになってからリアクションが大きくなったと、KWAのメンバーのひとりは分析する。

 彼女は続く試合に登場した。

KWA唯一の女子学生レスラー・無村架純

 ピンクアッシュの髪に、赤いタータンチェックとイエローハート柄のコスチューム。手には凶器のバットを持っている。名前をコールされ、コーナーポストに上った彼女は、両手を大きく広げた。そしてKWAの次期代表の座を男子選手と争う3WAYマッチを前に、マイクでアピールした。

「KWAは最近キラキラしすぎなんだよ! 学生プロレスっていうのはムラムラした気持ちを昇華させてプロレスをやるんだろう? みんなもっと童貞に誇りを持て!」

 すかさず「うるせー!」と、他の選手たちから野次が飛ぶ。

「私が代表になったら、童貞の新入生をすべて勧誘して、KWAの童貞率を上げたい! 以上!」

 学生プロレスの特色である下ネタを巧みに織りまぜ、笑いとともに一同をあおる彼女こそKWAに所属する唯一の女子学生レスラー、無村架純だ。

【次ページ】 木村花に魅了され、衝動的に学生プロレスの道へ

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