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「ユートピアみたいな世界」現役慶應大生の“女子レスラー”無村架純が語る学生プロレスの価値《特別フォトインタビュー》
posted2021/12/27 11:03
text by
門間雄介Yusuke Monma
photograph by
Takuya Sugiyama
地下アイドルから“慶應唯一の女子レスラー”に
慶應大学公認の学生プロレス団体、慶應プロレス研究会(KWA)に所属する唯一の女子学生レスラー、無村架純はもともと地元の東海地方で地下アイドル活動を行っていた。
「高校生のときにスカウトされて、バイト感覚でやってたんです。最初は特にアイドルには興味がなかったんですけど、やってるうちに楽しくなってきて、毎週土日にライブで歌うような感じでした。アイドルをやってると、人を沸かせるのが楽しくなってくるんですよね。学生プロレスも人を魅了するのが大事だと思うので、そういう共通点はあるかもしれません」
その後、高校卒業を機にアイドルとしての活動をやめ、大学で学生プロレスを始めた。異色の経歴の持ち主だ。
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「ご当地の地下アイドルだったので、すごくマイナーな存在でしたけど、あのときのファンの人がいまの私を見たらびっくりだろうなって。アイドルのときは自分自身とは全然違うキャラでしたから。いまはお金をもらってるわけではないし、自分の本当に好きなことを好きなようにやっているだけです」
下ネタも「言いたくなる」理由
彼女が虜になった学生プロレスは、主に男子選手たちによって1970年代から行われてきた。そのなかで脈々と継承され、いまや切っても切れないものになっているのがリングネームなどに見られる下ネタだ。
「不思議ですよね。なんであの文化があるのかわからないですけど(笑)」
そもそも彼女がプロレスに興味を持ったのは、木村花の華やかなビジュアルがきっかけで、下ネタはいっさい関係がない。
「でもお笑いだと思うとそんなに気にならないというか、慣れちゃうというか。両立できると思うんですよ、お笑いの部分と華やかで格好いい部分は。学生プロレスの世界にいると、最初はお笑いに関心がなくても、だんだんそれをやりたくなってくる。それで笑いを取れる世界なので、自分からそういうことを言いたくなるんです。完全に別々のときもありますよね。ネタマッチのときはお笑いに徹して、格好よさを考えないし、ガチ路線の試合ならお笑いの要素は入れないし。ひとつの試合のなかで緩急を付けることもあるから、なんでもありなんだと思います」
学生プロレスはそこに関わる選手たちのモチベーションも千差万別だ。アスリート志向の選手もいれば、エンターテイメント志向の選手もいるし、肉体を鍛えあげたい選手もいれば、体づくりにはこだわらない選手もいる。
「本当にそうですよね。KWAでムキムキなのは1年のラブドール・ジュニアくんだけで、それ以外はガリガリだったり、逆にお腹が出ててたりして(笑)。みんな好きなように生きてるから、いい意味でだらしない体の人もいるんです。それで上半身はどうしても脱ぎたくないっていう人もいるし、マスクマンだから恥ずかしくないっていう人もいますね」
そんな混沌をすべて呑み込んでしまうところが、学生プロレスのよさであり楽しさである。