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「僕も含めて99%の人は才能がない…でも天才でなくてもM-1優勝できる」パンクブーブー&笑い飯…M-1王者が芸人志望者に教える“授業の中身”
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/12/19 11:03
2010年M-1王者・笑い飯の哲夫さん(左、46歳)、2009年M-1王者・パンクブーブーの佐藤哲夫さん(右、45歳)
佐藤 「代われ」ってやつ。あれも昔からあるにはあった。「おまえ、ちょっと俺と代われ。俺がやるから」って。ただ、それをひたすら繰り返すという形が衝撃だった。これって、大発明ですよ。むしろ、そこはみんな避けていたんです。役割は固定しといた方がボケやすいし、手数も増やせますから。あと、これは僕が思ってるだけなのかもしれませんけど、途中で代われってやると、楽をしているように見えてしまうんですよね。医者と患者だったら、医者でボケられなくなったから、今度は患者でボケると。安易に立場を交換しちゃうと、作品として見た場合、内容が軽くなる。だから避けてたんです。なのにあえてスイッチして、さらに戻すという。あんなこと、普通は考えつかない。
――でも、あれは考えたというよりは、本気で「代われ」と思っていたんですよね。
哲夫 まず、2人ともボケたいというのが前提にあって。おまえのボケなんかより、俺のボケを見ろよ、という。なんか、自然とああいう風になっていった感じなんですよね。「代われ」っていうのも、人に言われて気づいたんです。あ、確かに言ってるな、って。発明と言うのなら、ボケは1回につき1個ずつというところでしょうね。
佐藤 やっぱり、感覚的なんだよな。うらやましい。うちの漫才は、感覚的なものはほとんどないんで。なぜウケるのかを筋道を立てて考えていかないと、ボケが作れない。感覚でつくると、お客さんも感覚で見ちゃうでしょ。だから、怖いんです。これこれこういう理由で絶対にウケるなっていうものしか見せられない。
M-1は二度と出たくないです
――少し話が変わりますが、2015年にM-1が復活しました。エントリー資格がコンビ結成10年以内から15年以内にのびるなどの変更もあって、ずいぶんと雰囲気が変わった気がします。
哲夫 20代ぐらいがメインの大会やったのに、今は30代ぐらいがメインになりましたよね。
佐藤 2017年の最終決戦に、とろサーモン、和牛、ミキの3組が残ったことがあったでしょう。あのとき「10年」から「15年」にのびたことによる影響というか、変化を感じましたね。ミキも、和牛も、すげえおもしろかったんですよ。でも、ラストイヤーのとろサーモンが貫禄で圧倒してしまった。立ち姿が堂々とし過ぎてて。あのときは、キャリアの差って、すげえなと思いましたね。
――2人が最後にM-1に出場してから10年以上経ちましたけど、今、M-1を観ていて、出られるものならまた出たいと思うものですか。
哲夫 思わないですね。
佐藤 二度と出たくないです。漫才って、本来、競い合ってやるようなもんではないですから。
哲夫 点数をつけるもんじゃないですよね。やってる側の立場で言うと。ただ、見る側に回ると、M-1はやっぱりよくできてるし、楽しいですね。
<#1、#2から続く>