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『M-1』決勝予想してみた…3回戦から取材した筆者「初出場が5組…優勝候補はロングコートダディ(吉本)かモグライダー(マセキ)か?」
posted2021/12/18 11:03
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
M-1グランプリ事務局
ロングコートダディか、モグライダーか。優勝候補の最有力は、このどちらかではないか。
今大会は初出場組が5組と、半数を超えた。やはり、初出場という「鮮度」は、新しさが重視されるM-1においては最大の武器になる。ロングコートダディも、モグライダーも初出場だ。そして、予選での爆発力も一、二を争っていたように思う。
ロングコートダディは基本的に「コント漫才」だ。畳み掛けるような圧力はないが、天才肌のボケ、堂前の独特な世界観が、癖になるような、えも言われぬおかしみを作り出す。言葉を選ぶセンス、際立たせるテクニックも抜群だ。
モグライダーのネタは、あまりにもバカバカしくて、涙が出てきそうになる。ネタもそうだが、存在自体が漫才という名コンビ。好条件で出番が回ってきたら、2019年のミルクボーイの時のような大爆発が起きるかもしれない。
じつは9大会連続で吉本の芸人が優勝している
2組が有利な条件は、他にもある。
M-1も、一つの生命体である。大会が生き長らえるための必須条件。それは「多様化」だ。
ロングコートダディはその点でも、大会の意思と合致する。ロングコートダディは、笑いの世界でいうところの「二刀流」だ。コント日本一を決めるキングオブコントでも昨年、決勝に進出している。
近年、関西の若手は「二刀流」が主流である。しかも、ロングコートダディを筆頭に、両方取り組んでいるコンビの方が俄然、勢いがある。
近い将来、この流れは、お笑い界全体に広がっていくに違いない。コントの才能がM-1に流れ込めば、M-1はさらに活性化する。ロングコートダディは、その旗頭になれる存在だ。
余談ながら、今年のメジャーリーグは「二刀流」の大谷翔平が席巻した。今年を締めくくるお笑い界最大のイベントも、やはり「二刀流」だった――。そんな結末が似合う年でもある。
モグライダーのもう一つのアドバンテージは、「吉本以外の事務所」であるというところだ。実は、2007年にサンドウィッチマンが優勝した翌年からは、9大会連続で吉本の芸人が戴冠している。偏りは、血を濁らせる。M-1も、そろそろ血の入れ替えが必要な時期に差し掛かっている。
今決勝は「非吉本」のコンビが2015年以来の4組と比較的多いのだが、そのことも大会が新しい血を欲していることを裏付けている。「非吉本」であることも、今大会においてはアドバンテージだ。