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香川やレバンドフスキを見出したSDも驚いた…4部で下積み予定だった伊藤洋輝にキレやすいシュツットガルトファンが拍手を送る理由
posted2021/12/13 11:00
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph by
Getty Images
スポーツの世界では、無名の存在が突如、表舞台で活躍してブレイクスルーすることがある。今季のブンデスリーガで言えば、シュツットガルトの伊藤洋輝がその1人だろう。
ドルトムント時代には、香川真司、ロベルト・レバンドフスキ、ピエール・エメリク・オーバメヤンらを、アーセナルを経て移ったシュツットガルトでは遠藤航など、数多くのダイヤの原石を見つけ出してきたスポーツ・ディレクターのスベン・ミスリンタートは、その優れたスカウト眼から「ダイヤモンド・アイ」の異名を持つ。
そんなミスリンタートが「ヒロキはチームに何かをもたらしてくれる選手になれる」と評価して獲得したのが伊藤である。だが、そんな彼も「ドイツのインテンシティに慣れるまで、1年くらいかかるかもしれないと話していたのに」と、伊藤の順応性に驚きを隠さない。
第8節のボルシアMG戦から7試合連続でフル出場
加入当初は4部リーグを戦うセカンドチームでじっくり経験を積む予定だったのだが、初年度からいきなりトップチームでレギュラーを確保。シーズン序盤は主力選手の負傷の影響もあったが、プレシーズンからトップチームに帯同され、テストマッチで評価を高め、あれよあれよという間にトップデビューを飾ってしまった。
14試合を消化した今季、すでにリーグ戦10試合に出場。第8節のボルシアMG戦からは7試合連続でスタメン出場している。
ただ出場しているだけでなく、地元メディアの評価も上々だ。
第12節のドルトムント戦は1-2で敗れたものの、強力オフェンスを誇るチーム相手に粘り強いプレーを見せた。地元のシュツットガルター新聞は、次のように評している。
「感情的にならずに競り合いに挑み、ドルトムントのオランダ代表FWドニエル・マレンを何度も止めた。ビルドアップでは好パスを連発。ボールコンタクト数はチーム最多の78回をマークし、守備陣では最高のパス成功率をマークした」
また、チームを勝利に導く先制点もマークした第13節のマインツ戦後には「素晴らしいパフォーマンス。ボールを持ったときの冷静さ、明確なプレービジョン、確実なパス能力。印象的なプレーを残したのは今回が最初ではない」と称賛の言葉を並べていた。
正確なパスは攻撃の起点として欠かせないものに
新加入選手に、ここまで好意的な表現を使うのは珍しい。ドイツは連邦国家で地方色が強い。シュツットガルトのファンは「取り組みに理解は示すが、辛抱強くない」人が多い傾向がある。新型コロナウイルス拡大抑制対策として、現在は無観客試合となっているが、有観客の際はかなり早い時間帯からブーイングが飛び交う試合も少なくない。