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香川やレバンドフスキを見出したSDも驚いた…4部で下積み予定だった伊藤洋輝にキレやすいシュツットガルトファンが拍手を送る理由
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/12/13 11:00
シュツットガルトで評価を高める伊藤洋輝。スタメンに定着し、攻守両面でチームに欠かせない存在となりつつある
ヘルタ戦では課題も散見
もちろん、どの試合でも何もかもすべてがうまくいっているわけではない。当然課題が出る試合もある。
例えば、3バックの左で先発フル出場した第14節のヘルタ戦がそうだ。
この日の伊藤は、元アルジェリア代表FWイシャク・ベルフォディルとマッチアップすることが多かった。そして、フィジカルで劣勢となったり、駆け引きで逆を取られたりするシーンが何度かあった。
34分、ペナルティーエリア左でパスを受けたベルフォディルは、すぐに前を向くとそのまま伊藤との1対1を制し、ゴール右へとボールを流し込んだ。別のヘルタの選手がシュート時にオフサイドの位置にいたためにノーゴールとなったが、見事にタイミングを外されて、シュートへと持ち込まれてしまった。
また、76分のヘルタの同点ゴールは左SBマルビン・プラッテンハルトのクロスが起点となって生まれたものだが、クロスの瞬間に伊藤はベルフォディルを離していた。結果、パスを受けたベルフォディルからのダイレクトパスがステバン・ヨベティッチのゴールをアシストすることになった。
評価を絶対的なものにするためには?
「ヒロキはいいプレーをしていたと思う。失点シーンでうまくいかないところもあったが。いくつかの攻撃でゴールにつながるようなボールを供給していた。何度か攻め上がり起点となろうとするプレーもあった。悪くはなかったよ」
試合後、リモートでの記者会見で伊藤について質問をしてみると、マテラッツォ監督はそんなふうに答えてくれた。
正直、この試合のシュツットガルト守備陣は全体的に不安定な時間帯があり、伊藤だけが問題を抱えていたわけではない。好プレーがたくさんあったのも間違いない。それに、どんなに優れたCBでもすべてのデュエルで勝利することは不可能だ。
しかし、決定的場面でしっかり相手を抑え込めるようになることが、今後チーム内での評価を、さらに絶対的なものとするだろう。10回中9回を完璧に抑えても、たった1度のチャンスをものにするようなストライカーがブンデスリーガにはたくさんいる。
伊藤の真価が問われるのは、まだまだこれからだ。