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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「センパイ、コウハイの意識が強い」育成や“優れたFWが少ない問題”… 日本サッカーとブラジルの課題を名DFシジクレイが斬る!
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTamon Matsuzono
posted2021/12/10 17:26
現役時代のシジクレイ。インタビュー前後には愛妻との2ショットに応じてくれた
「自分の得点パターンを徹底的に磨き、さらに少しずつそのパターンを増やすこと。自分の課題を克服するために効果的な練習を積み重ね、紅白戦や練習試合で結果を出して監督、コーチにアピールし、出場機会を得る。そして短い出場時間であっても結果を出し、監督、コーチ、チームメイトからの信頼を積み上げるしかない」
――日本のDFについては、どう評価していますか?
「以前は体格面のハンディがあったが、近年は日本人DFも大型化している。若い頃からDFとしての基本を徹底的に叩き込めば、もっともっとレベルが上がると思う。欧州トップリーグで活躍する選手がいるのは素晴らしいが、さらに良い選手が大勢出てきてほしい」
日本の文化では、年齢が極めて重要なファクター
――日本のフットボール全体への提言を。
「まず、クラブがアカデミーでしっかり選手を育成すること。そして、トップチームで若手をもっと積極的に登用してもらいたい。
プロの監督は常に結果を求められており、結果を出すためにベテラン、中堅を起用したい気持ちはよくわかる。しかしその一方で、若手の才能をきちんと評価し、これと見込んだ選手には年齢に関係なくチャンスを与えるべきだろう。
日本の文化では、年齢が極めて重要なファクターとなっている。選手の間ではセンパイ、コウハイの意識が強いし、クラブ関係者や監督、コーチにしても必要以上に選手の年齢を考慮することが多いのではないかな。
でも、ピッチに立ったら年齢は関係ない。17歳だろうが40歳だろうが、実力がある選手、将来性がある選手がプレーすべきだ」
――日本の選手育成についてはどう思いますか? 日本は南米・欧州と異なり、プロクラブのアカデミーでの育成と中学、高校、大学のチームでの育成の両方があるわけですが……。
「ブラジルでは、プロ選手になるにはクラブのアカデミーで練習する一択。学校のチームでプレーしてプロになることはないわけだが、日本には日本の事情があるのだろうね。現に、これまでどちらからも優れた選手が出てきている。
クラブのアカデミーでの育成には、効率が良い面がある。しかしブラジルの場合、子供の頃からプロになることだけを考えて若いうちに学業を放棄し、結果的にプロになれず、その後の人生で苦労する者が少なくない。
日本のように誰もが学校でスポーツを楽しめ、教育的な配慮がなされ、なおかつプロになる可能性も残されているシステムは本当に素晴らしいと思うよ」
――Jリーグの組織と運営、各クラブの施設や体制については?
「Jリーグはしっかり運営されており、各クラブの施設に関しても問題はない。ただ、選手育成に関してはもっと努力する余地があるだろうね」
◆ ◆ ◆
旅行中でありながら、長時間のインタビューに誠実に応じてくれた。
来季、コーチとして働くことになりそうなクラブのカテゴリーを聞くと、「ブラジルリーグの3部か4部だろうね」と言う。
ブラジルリーグは、4部まである(1部から4部まで、合計128クラブ)。しかし、その下に全国リーグに所属せず州リーグ(26州1連邦直轄区)を主戦場とするプロクラブが700以上ある。
この巨大なピラミッドを粘り強くよじ登り、地道にキャリアを積んでいこうとする姿勢に、彼の指導者としての強い覚悟を感じた。<前編から続く>