- #1
- #2
熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「センパイ、コウハイの意識が強い」育成や“優れたFWが少ない問題”… 日本サッカーとブラジルの課題を名DFシジクレイが斬る!
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byTamon Matsuzono
posted2021/12/10 17:26
現役時代のシジクレイ。インタビュー前後には愛妻との2ショットに応じてくれた
2012年、ガンバ大阪は元日本代表FW呂比須ワグナーを監督に招聘しようとした。しかし、彼は日本でプロチームの監督を務めるために必要なS級ライセンスを取得しておらず、ブラジルでも州選手権レベルでの指導実績しかなかった。このため、日本サッカー協会は呂比須の監督就任を認めなかった。
そこで、呂比須はブラジル1部の指導実績を持つ別のブラジル人監督をガンバ大阪に紹介し、自身はヘッドコーチという肩書ながら事実上の監督として采配を振るおうとした。しかし、これは“二頭政治”となって混乱を招き、監督と呂比須はシーズン序盤に解任されてしまった。
とても残念で悔しい状況だが、今後、自分たちが……
――世界的に、ブラジル人は選手の能力は高く評価されているが、監督への評価はそれほどではない。2002年ワールドカップ(W杯)で優勝したルイス・フェリペ・スコラーリはポルトガル代表の監督に招聘され、2004年ユーロで準優勝、2006年W杯でベスト4に食い込んだが、チェルシーでは結果を残せなかった。
ブラジルリーグを歴代最多の5度制覇しているヴァンデルレイ・ルシェンブルゴも、2004年末にレアル・マドリーの監督に就任したが、成績不振で1年で解任された。以来、欧州ビッグクラブで采配を振るうブラジル人監督はいない。
これに対し、アルゼンチン人監督の活躍は目覚ましい。マルセロ・ビエルサ(元アルゼンチン代表監督、現リーズ)は世界的な名将と評価され、ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリー)、マウリシオ・ポチェッティーノ(パリ・サンジェルマン)ら欧州ビッグクラブを率いる者が少なくない。南米10カ国の代表監督のうち、実に7人がアルゼンチン人だ。
両国は南米のライバルですが、どうして監督の実績と評価でこれほど差がついているのでしょうか?
「アルゼンチンでは以前から優れたライセンス制度を備えており、さらにUEFAと交渉して、双方のライセンスの互換性を獲得している。アルゼンチンの最上級監督ライセンスを持っていたら、欧州のどのクラブでも指導できる。また、戦術の重要性をよく理解していた。
これに対し、ブラジルのフットボールは選手の個人能力に頼る傾向にあり、戦術の重要さが十分に理解されていなかった。このため、CBFがライセンス制度を整備するのが遅れた。とても残念で悔しい状況だが、今後、自分たちが巻き返していかなければならない」
Jリーグで監督をしたい気持ちは、もちろんあるよ
――「指導法に正解はない。育成年代はともかく、プロチームの指導者にライセンスは不要」という意見もあります。どう思いますか?