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オリベイラの急死「選手には前に進もうと話しました」 …湘南は“過酷すぎた残留争い”をどう乗り越えたのか? 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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posted2021/12/06 17:02

オリベイラの急死「選手には前に進もうと話しました」 …湘南は“過酷すぎた残留争い”をどう乗り越えたのか?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

最終節までもつれ込んだJ1残留争い。前年J1最下位に終わっていた湘南ベルマーレは徳島の敗戦でJ1残留を決めた

 湘南は、残留争いで鎬を削る仙台との直接対決で勝利。この結果、仙台のJ2降格が決定し、横浜FC、大分もJ2に陥落した。降格するチームは、あとひとつ。

 残留争いは、湘南(勝ち点36)、清水(勝ち点36)、徳島(勝ち点33)の3チームに絞られた。湘南は、次の対戦相手で、残留争いを展開する徳島との直接対決に勝てば残留が決まる。仙台戦での勝利で勢いがつき、ホーム最終戦の徳島戦に勝って、ファン、サポーターと喜びを共有する。山口も選手もその気持ちでひとつになっていた。

 しかし、徳島戦に向けて調整している時、「オリベイラの急死」というニュースが伝えられた。チーム内に大きな衝撃が走り、選手は動揺した。徳島戦は、「難しい心理状態」という中での試合となり、湘南らしさが見えないままセットプレーからの失点で勝ち点を失った。

「徳島戦は、湘南らしくない動きのないゲームになってしまった。特に攻撃の部分はうまく機能しなかった。奪った後のボールを簡単に失うことが多かったですし、マイボールになってもいつもは頭を働かせて取れているポジションにズレがあったり、ボールホルダーもそこを見られていなかったりしていました。そのために自分たちの攻撃の時間が少なくなり、全体的に反応も悪かった」

 ホームでの最終戦後、徳島に敗れ、残留を決められなかったことについて山口は「今日だけは、選手を許してやってほしい」と涙ながらに訴えた。だが、頬がこけた表情からは山口が一番苦しかったのだろうということが読み取れた。

 徳島に敗れた翌日、オリベイラのお別れ会が選手、スタッフなどクラブ関係者のみで行われた。

「お別れができたので、選手には前に進もうという話をしました」

 また、練習では選手に「今までやってきたことをやれば何の問題もない。覚悟を持って戦えば大丈夫」と伝えた。現役時代、そしてコーチ時代に世話になった古巣との最終決戦も特に気にはしていなかった。ガンバのチーム状態は当然把握しており、今はその名前にビビる必要もない。それよりも徳島戦で出せなかった湘南らしさをいかに出すか、ということに集中した。悲愴感はなく、山口は、むしろ最後までもつれて戦える状況を楽しんでいた。

「どんな状況でも楽しむことを失ったらダメだと思うんです。想像もできないことが起きたり、しんどい状況がつづいても、楽しむ余裕がないと上手くいかないと思う。僕は、この仕事が好きですし、やりがいと責任も感じている。だからこそ楽しむことを大事にしたいんです」

 その姿勢を山口は、最後まで貫いた。

試合には負けても「非常に楽しい90分でした」

 普通は、残留降格が決まる最終決戦、ピリつく雰囲気になりがちだ。選手は周囲の目や報道などを見て、最終戦を過剰に意識し、気持ちが上下することもあるだろうが、監督が泰然自若でいれば落ち着いて試合を迎えることができる。

 それを湘南は体現した。

 ガンバ戦後、山口は試合をこう評した。

【次ページ】 湘南と徳島の「明暗を分けたもの」

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