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藤井フィーバーだけど「将棋会館の建て替えには恥ずかしながら資金面が…」 クラファン開始の実情を中村太地七段が正直に語る
text by
中村太地Taichi Nakamura
photograph byKyodo News
posted2021/12/02 11:05
2019年、羽生善治九段と藤井聡太七段(ともに段位は当時)の対局。数々の名局が生まれた東京・将棋会館も転機を迎えている
東京の将棋会館は1976年に建設されました。数々の名局がこの地で行われ、私自身としても奨励会、そして棋士としても過ごしただけに、多くの思い出があります。ただ、ここ10年~数年で老朽化もあり、さらには対局数自体も増えた。そのため対局室が足りず、手合いを組む、やりくりするだけで非常に大変な状況になってしまっています。
それに加えて一般のファンの方々も来て下さる将棋道場や売店も「もう少し充実させたい、色々工夫したい」という話はずっとありました。
私を含めて思い入れを持つ棋士が多く、建て直しを考えましたが、もともと手狭な敷地のために難しく。可能性を探る中で、千駄ヶ谷駅前のスペースに建て替えを……という経緯なのです。
《藤井フィーバー》で潤っている、と思われがちだが
ただ、その建て替えがトントン拍子で進む、というわけではありません。それには資金面の問題があります。
将棋界は《藤井フィーバー》ですごく潤っているのでは、と見てくださる方は多いかと思います。ただ実は恥ずかしながらというか……そんなことはまったくないという状態です。棋士自身も何十年も対局料から捻出して、お金を積み立てているのが実情です。
全く新しいものを建てるとなると、莫大なお金がかかる。そこで計6期にわたるクラウドファンディングという形を取らせていただいたのです。
私もクラファンの委員をしていますが……多くの方からもご支援いただいています。大阪でも高槻市のふるさと納税制度を利用するなど、身にしみてありがたさを感じています。
話を聞くと、スポーツ界でもそういった会場が存在するそうですね。
代表例で言うと、Jリーグのガンバ大阪さんが本拠地にされている「パナソニックスタジアム吹田」が、支援金で建てられたスタジアムとのことで……3年間で138億円もの募金が集まったとのこと。
ファン・サポーターの方々の熱心さが伝わるとともに、サッカー界として「ファンの皆さんとともに建設するスタジアム」という意識共有があったからこそ、これだけ多くの金額が集まったのかなと推察します。